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映画のフィルム特性まで再現するビクター「DLA-X7」で観るミュージカル「NINE」(ナイン)山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.54(1/2 ページ)

» 2010年12月15日 13時28分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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 この2年間、ぼくは「DLA-HD750」「DLA-HD950」とJVCのD-ILA方式プロジェクターを自室で使い継いできた。他社製品を圧するコントラスト表現のすばらしさに加え、独自のアプローチでフィルムルックを目指して開発された映像モード「シネマ1」の画質提案に心奪われたのが、その大きな理由だ。

 そして、この年末に登場した3D対応モデル「DLA-X7」をじっくりチェックしてみて、その2D画質の魅力がまた一段と飛躍したことを確認し、大きな衝撃を受けた。

ビクターが12月上旬に発売した「DLA-X7」。希望小売価格は84万円

 では、まずその光学エンジンの詳細から。LCOS(Liquid Crystal On Chip)と呼ばれる自社製反射型液晶素子D-ILAパネル自体は、前作の「DLA--HD950」と同じ世代のものが使われているが、今回偏光板の一種であるワイヤーグリッドを新調、アパーチャーを新設計して内部の迷光をより抑え、光学絞りを使わないネイティブ・コントラストで7万:1という驚異的な値を達成した(DLA-HD950は5万:1)。

 また、新カラーフィルターが装填され、DLA-HD950に比べて色域を約20%拡大、AdobeRGBを超える色再現範囲を実現したのも注目ポイントだ。ただし、このフィルターが入ると光透過率が落ちるため、このフィルターが常時入る「フィルム」(後述)、「シネマ」系映像モードではランプ・モードが「高」になり、ファンノイズが大きくなることには注意したい。

AdobeRGBを超える色再現範囲を実現(出典はビクター)

 光学エンジンの進化とともに注目したいのが、先述した映像モード「フィルム」の新設だ。今回JVC開発陣は、映画館用のキセノンランプを用いて35ミリ上映用フィルムの主流となるコダックとフジフイルムのポジフィルム(ハイコントラストタイプ)の発色パターンの解析を徹底、色度図上5000ポイント(HD950開発時の10倍の精度!)で明度と彩度の関係を精査し、そのデータをAdobeRGBカラーフィルターを用いた上で初搭載された自社製カラーマネージメントプロセッサーに反映させ、『フィルム1』(コダック用)『フィルム2』(フジ用)のカラープロファイルとガンマモードを完成させたのである。

画質設定画面

 開発陣によって明らかにされたコダックとフジのフィルム特性だが、前者は赤と黄の発色がよくコントラスト重視、後者は緑が強く出て階調重視という特長があるという。また、Cy(シアン)、Mg(マゼンタ)、Ye(イエロー)の減法混色でフルカラーを生成するフィルム映像は、RGB加法混色のビデオ映像に比べてRGBの彩度は浅くCyMgYeは深い、低輝度部に色情報が多いという性格を持つ。それらのデータが『フィルム1』『フィルム2』に反映されているのは言うまでもない。

 また、この「フィルム」モード時の色温度設定は、新設された『Xenon(キセノン)1』(5200ケルビン相当)となる。本機は従来通り光源に色分布特性にクセがある(赤の出力が弱い等)高圧水銀ランプが使用されているが、この『Xenon(キセノン)1』に設定すると、ブロードな色分布特性を持つ(=発色にクセの少ない)キセノンランプの光源色をシミュレートした色温度設定になるというわけだ。

 この色温度設定を可能にしたのが、先述したAdobeRGBに色域を超える新カラーフィルターと自社開発の高性能カラーイメージングプロセッサー。従来は色相・彩度・明度の調整を6軸で行っていたわけだが、本機のプロセッサーはそれにオレンジを加えた7軸調整を可能にしている。そんなわけできめ細かなホワイトバランスの追い込みができるようになり、色温度を下げても以前のように映像全体が赤みがかることもなく、キセノンランプの発色パターンに限りなく近づけた色温度設定が可能になったわけである。

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