前回、スマートだけが今年のテレビトレンドを表現しているわけではないと書いたが、一方でトレンドの1つであることは間違いない。しかしスマートテレビとは、いったいどういう製品なのだろうか。分かっているようでいて、実はよく分からないのがスマートテレビだと思う。そもそもスマートとは“賢い”ことなのに、スマートフォンは決して賢いわけではないし、フォロワーとしての各種スマートデバイスも、何をもってスマートと名乗っているのか、実のところ業界内でも共通の認識はないのかもしれない。
一部でネットに繋がるテレビをスマートテレビとする文言も見たが、インターネットに接続できるテレビは過去からあった。Webブラウザを搭載してみたり、伝言板機能を搭載してみたり、さまざまな形でインターネットを活用する試みが続けられており、インターネットに接続するのがスマートテレビという定義はちょっと違う。
今のところ、スマートフォンと同様、後から自由にインストールできるアプレットをフロントエンドツールとして、ネットワークの向こう側にあるサービスを、そのデバイスに最適なユーザーインタフェースで利用できる製品をスマートデバイスと呼んでいるようだ。その定義から言えば、スマートテレビとはスマートタブレットのテレビ版ということになる。
もっとも、モバイルデバイスであるスマートフォンやスマートタブレットとテレビは、使われ方が全く違う。テレビをかついで歩く人は当然いないわけで、基本的に据え置きであり、家族で共用する機会も多いテレビをスマートデバイス化するには、もう一工夫が必要だ。
ソニー的に言えば、それこそが「Sony Internet TV」(Google TVベースのインターネット対応テレビ)なのだろう。この製品についてソニーは、より積極的に前傾姿勢でテレビを楽しむ世代に向けた新しい製品だと語っている。通常のBRAVIAシリーズにも、インターネット上のビデオコンテンツを再生する機能は組み込まれているからだ。従来の枠組みで、後傾姿勢でリラックスして楽しむコンテンツはBRAVIA。しかし、YouTubeのように積極的にコミュニティーに参加して楽しむタイプのコンテンツはSony Internet TVというわけだ。
一方、パナソニックとシャープは、それぞれ異なるアプローチでソニーとは違った解決策を見いだそうとしている。パナソニックは「VIERA Tablet」、シャープは「GALAPAGOS」をフックにして、後傾姿勢のコンテンツはテレビでゆっくりと楽しみ、ユーザーがより積極的に関わるコンテンツはタブレット型端末を使うという手法を提案している。
いずれもタブレット上で見ている動画を、ヒョイとテレビ側に放り投げるように、映像の続きをテレビに投げる機能が実装されている。これは、コンテンツのサーバ情報や再生位置などの情報をテレビ側に投げることで連携する仕組みだ。
パナソニックの場合は、コンテンツにアクセスするフロントエンドの部分をAJAXで書いておき、VIERAとVIERA Tabletで同じユーザーインタフェースで映像ソースにたどり着けるようにもしてある。ユーザーはテレビリモコンでも、タブレット端末でも、自由なスタイルでインターネットの映像を楽しめるようになる。
当然、将来的にはAndroidにGoogle TVと連携する機能も組み込まれるのだと思うが、現時点ではそうしたプロジェクトは表向きになっておらず、Google TVとAndroidはそれぞれ別々に開発されているが、両者が連携してくれば、今とはまた違った展開になってくるだろう。
スマートテレビの世界は、単にアプリケーション・インストーラブルなテレビという枠(サムスンやLGはそうした作りになっている)を超えて、いくつものスマートデバイスを組み合わせた提案に発展するだろう。ユーザーにどのようにインターネットを通じたエンターテイメントを提供するのか、正解を求めてメーカーの模索が続きそうだ。
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