7月のアナログ停波後を見据え、テレビ市場に変化が現れ始めた。昨年11月のエコポイント半減前は、とにかく商品の確保が第一だったメーカー各社だが、この春はそれぞれに特長のある個性的な製品を相次いで発表している。「高付加価値モデルに注力することで、商品力を高めようとしている」(麻倉氏)。春の新製品、そして今後のトレンドについて、AV評論家・麻倉怜士氏に詳しく解説してもらった。
――各社から新製品が発表されています。今年の傾向を教えてください
今年が普段と異なるのは、7月のアナログ停波に伴う市場の変化にあたり、特長のある個性的な製品を作っていこうという傾向です。昨年11月の異様なエコポイント需要で2010年は2300万台という記録的は販売台数となりましたが、2011年は1300万台と半減すると見込みです。もっとも、通常のテレビ市場に戻るということでしょうね。
各社の新製品を見ると、それぞれの個性が色濃く反映されたものになっています。具体的には3つの方向性が見えてきました。
まずは“細かい部分”の画質向上についてです。今までは、デジタル放送やフルHDという呼び声で大まかな画質向上を目指す流れだったといえますが、今回はS/Nや色の階調感など、より細かい部分に目がいくようになりました。
もう1つはコントラストについて。これまでは、基本的に白100%と黒100%の間でコントラストを良くするアプローチでしたが、ここへ来て信号に入っている100%を超えるダイナミックレンジを出そうという流れが生じています。デジタルカメラで先行したハイダイナミックレンジ(HDR)の流れがテレビにもやってきたと考えて良いかもしれません。
3番目は、3Dテレビのラインアップが下(より小型に)に広がってきたこと。さらに2年目に入って3Dの表示画質も向上しています。
――3つの傾向を詳しく解説してください
1つめの画質向上について。まず動向が注目されるのは超解像技術でしょう。これまで、東芝が先陣を切って1枚超解像を展開してきましたが、春の新製品では東芝とソニーが「複数枚超解像」という概念を打ち出してきました。
東芝は、時間差再構成法とでもいう手法を用い、時間に差がある複数フレームを参照してサブピクセル単位で処理を行うスタイルです。前2フレームと後の1フレームを合わせて4フレームで超解像処理を行います。メリットは、動きのある映像に対してより精度の高い超解像処理が可能になることです。
一方のソニーは、昨年まで“超解像”という言葉は使っていませんでしたが、1月の新製品(→32V型まで3D対応、ソニー「BRAVIA」の春モデル登場)で「X-Reality」という名前の下に“オブジェクト型超解像技術”を打ち出しました。そして今回は、進化版のDRC(デジタル・リアリティ・クリエーション)を取り込んだ「X-Reality PRO」となり、複数枚フレームを用いた“データベース型複数枚超解像”へと進化させています(→ソニー、直下型LEDバックライト搭載の「HX920シリーズ」など“BRAVIA”新製品)。
――ソニーのX-Realityは、以前から研究されてきた再構成法などの“超解像技術”とは異なる手法だと思いますが、同じように論じても良いのでしょうか
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