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未来の立体テレビにNHK流スマートテレビ、技研公開は見どころ満載技研公開2011(1/2 ページ)

» 2011年05月25日 12時33分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 NHK放送技術研究所は5月24日、「2011年度技研公開」の報道関係者向けプレビューを行い、先日発表した直視型スーパーハイビジョン液晶ディスプレイを含む36の展示を披露した。技研公開は、放送技術分野を専門とする日本唯一の研究機関であるNHK放送技術研究所が、毎年5月に1年間の研究成果を公開するイベント。第1回が行われた1947年から数えて今年は65回目となる。

 プレビューに先立って行われた説明会では、NHK放送技術研究所の久保田啓一所長が7月のアナログ停波に触れ、「アナログ放送は、58年の間にカラー化や衛星放送サービスなどさまざまな進化を果たしてきた。今後はデジタル放送を成熟させ、将来のサービスを開発することが技研の役目」と語った。NHK技研は、将来のテレビ技術として3年後の「HybridCast」、10年後の「Super Hi-Vision」、20年後の「空間像再生型立体テレビ」というおおまかなロードマップを描いており、今年もそれぞれに関連する展示が注目を集めそうだ。

8K×4KのフルSHV解像度を持つ85V型液晶ディスプレイ。シャープと共同開発した(左)。NHK放送技術研究所の久保田啓一所長(右)

“NHK流スマートテレビ”「HybridCast」

 3年後の実現を目指すHybridCastは、通信と放送の融合を目指した技術だ。同報性や高信頼性という特長を持つ放送に対し、通信はユーザー個々の要求に応えられるメリットがある。現在のデジタル放送が採用しているMPEG-2 Systemでは、番組のTS(トランスポートストリーム)に新たな情報を入れ込むことは難しいが、IP網を伝送路として活用することで、それぞれの“いいところ取り”を目指す。注目は、IP網で伝送したデータをテレビやSTBから参照するための制御メタデータを作成したこと、そして放送のクロックをベースとしたタイムスタンプをつけ、テレビ放送とネットワーク経由で取得したコンテンツを同期させる方式を設計した点だろう。

 HybridCast対応の端末としては、テレビ、レコーダー、タブレットを含む携帯端末、PCなどを想定しており、展示会場にはパナソニックと共同開発したSTBやソニーのテレビ一体型端末も並んでいた。HybridCast対応アプリを導入したiPadやAndroid端末も用意され、これらの端末が互いに連携するデモンストレーションを披露している。

パナソニックと共同開発したSTB(左)。HybridCast対応アプリを導入したiPadも(右)

 例えば、ネットワーク経由で取得した字幕をテレビ番組と同期して表示することで、通常の放送ではまかなえない多彩な言語をカバーできる。またスポーツ中継などではテレビ放送とは異なる場所から撮影した映像を手元のタブレットで視聴する「マルチビュー」といった使い方も提案している。

 昨年実証実験を行った「teleda」を利用したソーシャル系のデモンストレーションも見ることができる。例えば、友達を登録しておくと、どの番組を視聴しているかがテレビ画面上で分かり、タブレット上で同じ番組を選択するとテレビのチャンネルが連動して切り替わるといった具合。タブレットから番組に対するコメントを書き込むことも可能で、離れた場所にいながら友達と一緒にテレビを見ている気分が味わえるという。

友達が見ている番組を選択するとテレビのチャンネルが切り替わる

 “放送と通信の融合”を目指してスタートしたHybridCastは、時流に合わせてSNSやモバイル端末連携を取り込み、「NHK流のスマートテレビ」(久保田所長)に進化しようとしている。なお、HibridCastは今後仕様の策定と実用化検証システムの開発を行い、賛同するメーカーや事業者に対しては仕様を公開する予定だ。

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