ヘッドフォンからテレビ、ホームシアターまで、さまざまなジャンルの数多あるAV系新製品のなかから注目の新製品をピックアップし、いち早いレビューをお送りしていく「野村ケンジのぶらんにゅ〜AV Review」。今回は、自腹で入手した「iPad 2」を取り上げたいと思う。
とはいえ、一般的なレビューはすでに各所で掲載されており、それをいまさら重ね書きするのも芸がないので、ここは“ぶらんにゅ〜”らしく、音質についてのチェックを行ってみたいと思う。
iPad 2は、いわずとしれたアップルのタブレット端末。機能的には、大ざっぱな表現をすると「iPod touch」を大画面化したものといえるが、それにとどまらないさまざまな魅力を持っている。実のところ、筆者にとって最大のポイントはその「大きな画面」だったりする。約10インチのタッチパネルは、電子書籍リーダーやビデオプレーヤー、ゲーム機としてだけでなく、情報の出し入れのキーとなるデバイスとして、さらにはさまざまな機器の操作パネルとしても、扱いやすさでかなりの優秀さを示してくれるのだ。AV機器メーカーもこの利点に注目し、今や多くのメーカーから機器操作アプリがリリースされている。
筆者が初代iPadを買わず、iPad 2に手を出したのはこういう事情にある。昨年まではiPod touchがあれば充分という雰囲気があったが、この春以降リリースされているAV機器用アプリは、デフォルトをiPhoneとしながらも、iPadでの使用も想定されているものが多い。実際、次回にレビューを予定しているフィリップスのiPodドッキングスピーカーも、iPadには画面配置の異なる専用アプリが用意されている。対応機器の増え方次第だが、リモコンを複数並べておかなくても良いというだけでも素晴らしいと思う。
というように、今後AV機器にとってはなかなか便利な存在になりそうなiPad2だが、カメラ搭載や薄型化、CPUのスピードアップなど、基本スペックの向上を見ても先代iPadに対してかなり魅力が増した。カメラのクオリティーがiPhoneに対して劣る、フルHD対応画面ではない、HDDレコーダーに録画した地デジ映像は見られないなど「あともう少し」感もあるが、少なくとも最新の薄型テレビやレコーダー、AVアンプなどの機器を所有している人にとって、確保しておくと便利なデバイスであることは間違いない。まあ、iPhoneや初代iPadを所有している人は、それでも充分こと足りるのだろうが、デバイスのサイズ(=画面サイズ)が大きい分、使い勝手がとても良い点だけは念を押しておこう。
さて、デバイスとしての機能的、使い勝手的な優秀さを持つiPad2だが、オーディオプレーヤーとしての実力はいかがなものだろう。
まず標準となる「iPod」機能の操作性だが、表裏なくかなり使いやすい印象だ。画面の大きさを生かしたiTunesに近いレイアウトを持つため、楽曲の選択などの操作が直感的かつスムーズに行える。この点においては、iPhoneやiPodとは別物といえる。ユーザーの満足感はかなり高いはずだ。
ただし、ヘッドフォン出力にソニー「MDR-Z1000」を接続して音楽を再生してみると、一聴してかなりがっかりした。S/Nはよいものの、解像度感がかなり低いのだ。ダイナミックレンジもあまり広くはないため、音数もメリハリの表現もチープ。演奏がとても平坦に聴こえてしまう。第6世代「iPod nano」に比べれば格段にマシだが、高域の一部にわずかなひずみ感があり、個人的にはかなり聴きづらい印象を持った。
たまたま手元に「iPhone 4」の試聴機があったため、それとも聴き比べてみたが、音質だけでなく、音色もほぼ同一傾向だった。LSIも回路構成も似たようなものなので、音が近いのは当たり前かもしれないが、iPhoneに対する「iPod touch」のような、電話機能のないメリットはいっさい感じられない。さらにiPad2には、ボディーサイズという大きなメリットまであるはずなのに、それも生かされていない印象だ。
気を取り直して、今度はドック出力の音をヘッドフォンアンプにつなぐと、グッと良質なサウンドになってくれた。解像度感がいくらか増し、ダイナミックレンジも向上、その効果でかなりまともな演奏になる。とはいえ、これはスタート地点が低いからであって、ほかのiPodのドック出力よりも優位な音になるわけではない。比較試聴した第5世代iPod nanoや第3世代iPod touchにはとても及ばず、クセがなく、出力も大きい分第6世代iPod nanoよりも幾分マシなレベルだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR