先週は「IFA 2011」での発表を出発点に話を進めたが、テレビに関しては海外と日本では製品の動向がまったく異なる。もともと、テレビには各地域ごとに放送を中心としたコンテンツの楽しまれ方に違いがあるからだ。
例えば欧州は、多数の国が地続きのため、言語の面でも自国と隣国の言語を解する人も多い。このため、”隣の国のテレビが見える”価値が高く、インターネットによる番組配信が拡がりやすかった、と現地メーカーの担当者に伺ったことがある。インターネットを使えば、自国民以外の顧客にもリーチできる。このためか、欧州のインターネット番組視聴機能は、米国よりも早いタイミングで”常識”になっていた。
しかし、日本ではこの事情は異なる。近年は見逃し視聴など、テレビ局のサービスの一環としてインターネット配信も行われるようになってきた。しかし、地上波によるテレビ番組が視聴者数、番組制作予算、などの規模で圧倒的で、隣り合う国との相互受信といった事情もない日本の場合、なかなか”電波による放送”以外のメディアが育たない。
このあたりのメカニズムについては、放送事業者や番組制作者などに話を聞いても、色々な意見があるので、”コレだからこう”という意見は出せていない。しかし、1つ明らかなことは、”ブロードバンドインターネットが普及し、テレビもそこにつながるようになってきているから”といって、急にテレビのビデオオンデマンド機能が充実するわけではない、ということだ。
こればかりは電機メーカー側だけではコントロールできないだけに、徐々に世の中が変化するのを待つほかはない。10月上旬に開催される「CEATEC JAPAN 2011」ではいくつかの提案もあるはずだが、注目は海外の動向を見てインターネットの映像配信が……という方向での期待を持つのではなく、電機メーカー側でコントロールできる範囲で何ができるのか?……こうしたことがテーマの1つとなるだろう。
テレビの進化は、その国の事情に合わせて変わるものだ。ネットワーク機能に関しても、インターネット動画の受信機能よりも、録画された番組のネットワーク共有、携帯電話/スマートフォンを活用した持ち出しなどが重視されるのが、日本市場の特質だろう。
これはタブレット端末のAV分野での活用にも言えることだ。タブレット型端末は、もちろん世界的な市場を見据え、たくさんの台数を見込んでいかなければ競争力のある事業として続ける事はできないが、各国での使い方はそれぞれの地域で考えるものだ。
現在のところ、テレビとタブレット端末の連携というと、リモコン操作や番組への情報の付与などに伴っているが、年末以降は新しい提案が増えてくるはずだ。というのも、価格やバッテリー持続時間などの面で有利なAndroidタブレットが、そろそろ1080iのハイビジョン放送再生に対応可能なレベルに高性能化してきているからだ。
1080iのハイビジョン放送は、きちんと再生しようと思うと、デコードだけでなくI/P変換などのプロセスを含め、従来のタブレット型端末では難しかった。しかし、例えば米テキサス・インスツルメンツの「OMAP4」は、デジタル放送の暗号化規約にも合致するDTCP/IPを通じて1080iの映像を受信、再生する能力を備えている。
今後は画面が大きくインタラクティブ性に優れたリモコン、あるいは情報表示用ディスプレイに留まらず、本格的に”AVコンテンツの窓”として、タブレット型端末の活用提案が行われるはずだ。
本誌では”スマートテレビ”に関する討論を行ってきたが、私は”日本におけるスマートテレビ”について、”録画機能と組み合わせた提案”が、もっとも今の事情に合っていると思う。そこでのタブレット型端末やスマートフォンの活用、連携が増えてくれば、その次の段階へと踏み出すこともできる(次回へ続く)
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