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誰でも手が届く7.1chの臨場感、パイオニア「VSA-922」をチェック山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(1/2 ページ)

» 2012年05月21日 14時52分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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 最近観た映画Blu-ray Discのなかで、音響効果のすばらしさで印象に残った作品は? ともし問われれば、ぼくは即座に「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」「ヒューゴの不思議な発明」(これは米国盤だが)の3タイトルを挙げる。

パイオニアが5月下旬に発売する「VSA-922」。希望小売価格は8万4000円

 ハリウッドの最新映画音響技術の精華がふんだんに盛り込まれたこの3作品、すべてサラウンドバック・チャンネルに信号が記録された7.1ch収録作品である。ちなみに音声コーデックは「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」がドルビーTrue HD、「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」「ヒューゴの不思議な発明」はDTS HDマスターオーディオ。いうまでもなく、両者ともBlu-ray Disc最高品位のロスレス・サウンドである。

 実際にこの3作品を5.1chと7.1chシステムで聴き比べて観ると、劇伴音楽の安定感、効果音の音数、音に包み込まれる快感などで7.1ch再生の優位は明らかとなる。サラウンドスピーカーを4本設置するタイヘンさはあるけれど、熱心なAVファンは、こういう作品が増え続けている現状を踏まえてぜひ7.1ch再生に取り組むべきだと思う。

 一方、この春登場した各社のAVアンプを調べてみると、10万円以下の入門層向け製品のほとんどが7チャンネル分のパワーアンプを積んでいることに気づく。つまり、外部アンプを加えることなく、これらの作品をそれ1台で正しく7.1ch再生できるわけだ。ソニー「STR-DH530」など、4万2000円というバーゲンプライスで7ch構成なのだからほんとうに驚いてしまう。しかもその音がびっくりするくらい本格的なのだ。

 そんなこの春の7ch構成AVアンプの新製品をチェックしてみて、その音のよさと提案性の豊かさで、アタマ1つ抜け出た俊英モデルだと実感させられたのが、パイオニアの「VSA-922」だ。

 同社製AVアンプといえば、昨年冬のフラッグシップ・モデル「SC-LX85」(33万円)の大ヒットが記憶に新しいが、パイオニアAVアンプ設計チームの好調は続いているようで、「VSA-922」の完成度は驚くほど高く、8万4000円でここまでの内容を盛り込んでいいのか、と考え込まされてしまうほど。

 では、本機の概要に触れておこう。パワーアンプは100ワット(6オーム)×7ch構成。SC-LX85とは異なり、動作方式はDクラス(デジタル)増幅回路ではなく、AB級のアナログ増幅回路である。拡張型サラウンドフォーマットのドルビープロロジックII x(サラウンドバックch使用)とプロロジックII z(フロントハイトch使用)に対応するほか、5.1ch構成時には余った2ch分アンプをフロントL/R用のバイアンプ駆動に充てることも可能だ。

VSA-922の背面と内部構造。HDMI入力は6系統

 音質・機能面でまず注目していただきたいのは、DLNAを用いたネットワークオーディオ再生機能の充実だ。リニアPCMのWAV形式、ハイレゾの標準規格となりつつあるロスレスのFLAC形式ともに192KHz/24ビットまでのハイレゾファイルの再生を保証する。つまり、本機をネットワーク環境に置けば、PCやNASに収めたCDフォーマットを超えるほとんどすべての高音質ステレオミュージックファイルが自在に楽しめるわけである。

 その音質は、ハイレゾファイルならではのスケールの大きな音場感、揺るぎない安定した音像描写が楽しめるみごとなもの。同社製ネットワークオーディオ専用プレーヤー「N-50」(7万4800円)と2chプリメインアンプ「A-30」(4万9800円)の組合せと本機のDLNA経由の音を比較してみたが、どっちの音が優れているか、にわかに断じるには難しいと思わせるレベルの音に仕上がっていることが分かった。N-50+A-30のほうが音の繊細さとかディティールのきめ細かな描写などで上回る印象もあるが、音の押し出し感、力強さ、リズムのキレのよさではVSA-922のほうがぼくには好ましい。

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