さて、肝心の音質面でのクオリティーアップは、どのような改良が施されているのだろう。ポイントとしては、パワーアンプICや電解コンデンサ、抵抗など、アンプ部と電源部を中心にパーツ変更を行い、ブラッシュアップを施したという。また、HDMIを含むデジタル系のボードも新設計されており、こちらは回路の引き回しを変更、より短距離でノイズの影響を受けにくいものに改良している。
加えて、外部機器からのジッター侵入を阻止して高音質を守るロージッターPLL回路や、FLディスプレイ用電源をメイントランス電源から独立。ネットワーク部には44.1/88.2kHz用と48/96kHz用で個別のクロックジェネレーターを用意する「デュアルオーディオクロック」など、前モデルから受け継がれたノイズ低減の技術もあわせて、総合的に音質向上を果たしたようだ。
いよいよ、肝心のサウンドについてチェックしていこう。
冒頭でネタバラししてしまったが、前モデルに比べて、音質的なはかなりのもの。実際に新旧並べて同環境で試聴してみたが、その差は歴然としたものだった。
昨年の段階では、かなりの好印象を持った先代モデル「RX-V771」だが、「RX-V773」相手では分が悪すぎた。S/N感、表現のダイナミックさ、解像度感の高さなど、すべてにおいて大きな向上を果たしているのだ。価格クラスでいうと、明らかに1グレードか2グレードは上。同社のAVENTAGE「RX-A1010」に肉薄し、場合によっては「RX-V773」の方がいい、という人が現れそうなくらいのレベルアップだった。
例えばBD映画「ダークナイト」を見ると、臨場感が別次元。よりダイナミックになったこともあるが、その階調表現かまた細やかなため、その効果で映像のリアリティーが格段に高まっている。さらには、音色的な表現の正確さから、見慣れた作品のはずが「ああ、これってこんな音だったんだ」と新たな驚きをおぼえることも。こと映像コンテンツに関しては、なかなかの“表現上手”といえるだろう。特にアクション系は、いままで迫力のみと思っていた作品が、意外に緻密(ちみつ)な音表現をしていることを発見できて、結構楽しい。
一方、2chの音楽コンテンツに関してもなかなかの手応えを感じた。AVアンプは、その多機能さと引き替えにピュアオーディオ用のアンプに対して音質的には見劣りするといわれているが、なかなかどうして、RX-V773の音を聞くかぎり、そうはいい切れない、聴かせ上手なところがある。
例えばネットワーク経由でNAS内の音楽コンテンツを再生すると、先代RX-V771でも44.1kHzと96kHzの音源をしっかりと描き分けられる実力は感じられたが、RX-V773では根本的な“表現の深み”が違う。格段に向上したS/N感の恩恵で、きめ細やかで、丁寧なサウンドを聴かせてくれるようになったのだ。ダイアナ・クラールの96kHz/24bitハイレゾ音源を聴いてみると、彼女の声のニュアンスを事細かに再現してくれるし、何よりも演奏全体がクリアで、とてもフレッシュに感じる。一方で打ち込み系を聴いてみても、音場調整のおかげもあるのだろう、キレが良く、ダイナミックな演奏を楽しませてくれる。
ここまで音質が向上すると、数万円レベルのプリメインアンプを探している人に「AVアンプも考えてみれば?」といいたくなる。単にシステムが統合できるというメリットだけでなく、オーディオ用のアンプとしても、積極的に活用したくなるレベルだからだ。
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