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“音楽制作の最先端”だからできたハイレゾ音楽配信、「VICTOR STUDIO HD-Sound.」(1/2 ページ)

» 2012年09月06日 20時47分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 ビクターエンタテインメントが運営する「ビクタースタジオ」は9月5日、音質にこだわる独自レーベル「VICTOR STUDIO HD-Sound.」を立ち上げ、オンキヨーの「e-onkyo music」で配信を開始した。スタジオが運営主体となるレーベルは業界初。同社が保有する豊富なカタログの中から、ハイレゾ音源化に適したものを厳選したという。さっそくビクタースタジオを訪ね、詳しい話を聞いた。

手前がビクタースタジオの秋元秀之スタジオ長。奥が新レーベル責任者でデジタルソリューショングループ長の鈴木順三氏(左)。最近、隣のビルにアニメなどのアフレコ専用スタジオを新設し、計8スタジオとなったビクタースタジオ(右)

 ビクタースタジオといえば、1969年に当時の「築地スタジオ」から移設された老舗音楽スタジオ。もとはビクターレーベル専用だったが、1982年の大改修を機に外部にも門戸を開き、現在は貸スタジオをはじめ、マスタリングやアーカイブなど、外部からもさまざまな仕事を請け負っている。また「K2」技術やJVCケンウッドのモニターヘッドフォンなどのAV機器開発にも携わる、AVファンにはなじみ深いスタジオといえるだろう。

 40年超の歴史の中で、サザンオールスターズを筆頭に多くの著名アーティストがレコーディングを行ってきたが、ビクタースタジオ内のレコーディングスタジオやエンジニアは“指名買い”が多いのも特長だという。

サザンオールスターズもご愛用の401スタジオ。壁面にはられたオレンジ色の吸音材が1段だけズレていることが分かるだろうか。部屋の響きを決める際、スタジオ内で意見が分かれたため、この部分だけマジックテープで固定したという。音響特性を変えたいときは、脚立で上ってバリバリとはがす(中)。壁の一角を引き出し、裏返すと吸音材が出てくる。まるで“匠”の作った家のよう(右)

音響特性がまったく異なるサブルームをいくつも用意して、さまざまなニーズに対応する(左)。まるでアンティークのような機材も現役(中)。マイク棚には新旧の名機が並ぶ。外観は同じでも真空管とコンデンサーで音が全く違う(右)

 秋元氏によると、「一般的なスタジオは、どの部屋を借りても同じ作業が行えるよう、同一の音響特性と機材を持つケースが多い。しかし、ビクタースタジオの場合は8つのスタジオそれぞれに特色があり、天井の高さから音響設備、サブルームの構成、設置されている機材などが大きく異なる。その空間ならではの響きや機器の持つ特性を大事にしているから」という。所属するマスタリングエンジニアは「FLAER」(フレア)というオリジナルブランドのもとで組織され、自らの名前の付いた部屋を持つ。個々の技術と経験で仕事が入る、いわばキャラクターのたったプロ集団だ。

 「最近は『Pro Tools』のようなソフトとPCが1台あればマスタリングやオーサリングが可能な時代。しかし、古くなってもアナログ機器の魅力は変わらず、アナログ的であっても“人の工夫”に勝るものはない」(秋元氏)。

マスター音源の音をそのまま家庭に

 そんなビクタースタジオが立ち上げた「VICTOR STUDIO HD-Sound.」には、明確なコンセプトがある。まずは「絶対的な音質へのこだわり」と「厳選したタイトル」。新レーベルの責任者である鈴木順三氏によると、「長年、音楽制作の現場となってきたスタジオは、オリジナル音源の形態やコンディションを把握していることが大きな強み。スタジオならではの音源提供を前提とし、特定のジャンルやカテゴリーでくくられる一般的なレーベルとは一線を画すレーベルにした」という。

 「DVDオーディオの時代からハイビット/ハイサンプリングの楽曲制作はやってきたが、DVDオーディオやSACDは普及しなかった。今は(PCオーディオなど)徐々に環境が整い、良いタイミングだと思う」。

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