ソニーのポータブルヘッドフォンアンプ「PHA-1」が、なかなか好調な滑り出しのようだ。実際、筆者のまわりのオーディオファンも購入した、もしくは購入予定という人が少なからずおり、「ポータブルヘッドフォンアンプがここまでメジャーな存在になるなんて、時代も変わったな」と思わず感慨にふけってしまった。
ポータブルヘッドフォンアンプが多くの人に認知されはじめたのは、いくつかの理由がある。なによりiPodから始まる携帯音楽プレーヤーの普及があり、それに付随してサードパーティ製ヘッドフォン/イヤフォン製品の多様化、そして近年のスマートフォンブームも含めて音楽リスニングの環境がより広い層まで広まっていったことなどが考えられる。ユーザーが次のステップとして音質を求める一方で、機能性重視のスマートフォン単体がそれを満足させることができなかったことがあるだろう。
“よりいい音で楽しみたい”と、まずは純正より高品位志向のヘッドフォン/イヤフォンを導入、特に高級製品を買ってしまった人はなおさら、スマートフォンや既存のプレーヤー単体でその実力を発揮させるのは難しかった。ただ、機器の使い勝手に不満はなく、もちろんせっかく導入した高級ヘッドフォンは絶対に無駄にはできない。それならどんな手段が──。そう考えるとポータブルヘッドフォンアンプに注目が集まるのも自然な流れといえる。
そういった流れの2012年後半現在、PHA-1はとても魅力的な製品に見える。例えば「iPhoneとデジタル接続できる機能」は、そもそも利用者が多いiOS機器ユーザーに対して「大幅な音質向上の可能性がある」のが絶大な魅力。加えて96kHz/24ビット対応のUSB DAC機能やアナログ音声入力も用意し、スマートフォンやPCオーディオ用としても使えるよう汎用性を高めたのも良好なポイントである。
では仕様を見ていこう。音の要となるDACにはWolfsonの高級チップ「WM8740」、オペアンプにTI「LME49860」を採用し、さらにデジタル/アナログの回路を分離したレイアウト、オーディオ回路のフィルムコンデンサーなどに採用したオーディオ専用部材など、音質追求・音楽再生のための仕様を盛りこんだ。
外観デザインも昨今のニーズを考え、よく練られている。例えば、幅60ミリ前後のiPhoneやAndroidウォークマン、Androidスマートフォンなどと重ねやすい横幅(67ミリ)と、両側面にシリコンベルトを引っかけてプレーヤーをスマートかつ簡単に固定できる機構、さらに重ねても傷が付きにくいシリコンの滑り止めもあらかじめボディに装着するなど、利用者の使い勝手を考慮して工夫された仕様はやはり同社ならではだ。ボリュームつまみがポケットやバッグの中で誤動作しないよう、および接続したイヤフォン端子を衝撃から保護するための亜鉛ダイキャスト製のバンパーを採用するのも、なんというかソニーらしさの演出を一役担っている。
前述したバンパーなどの影響か、写真で見るとやや大柄かと思ってしまいがちだが、実物は意外と細身で小型だ。本体サイズは約67(幅)×130(奥行き)×26(高さ)ミリで、重量は約220グラム。幅においてはiPhone 4/5や3.5型ディスプレイのウォークマンF800シリーズなどと大きな差はなく、スマートフォンはケースを付けたままでもたいていはシリコンベルトの固定でスッキリ収まってくれる。
入力切り替えは後面にUSB Standard-A、Micro USBの入力端子とともにある。やや奥まった場所にあるスイッチはサイズが小さく少し扱いにくいが、ひんぱんに操作しない部分のため不便さはそれほど感じない。ポータブルプレーヤーとの接続は、Dockコネクタ搭載iOS機器デジタル接続用、ウォークマン接続用、ステレオミニプラグ接続用の3タイプが付属する。この3つで、2012年10月現在主流の多くのプレーヤーはすぐに使い始めることができるだろう。
では、iPhone 5、iPad Retinaディスプレイモデル(第4世代)、iPad miniに採用された新インタフェース「Lightning」についてはどうか。(メーカーからの正式対応はまだ発表されていないが)筆者環境では、iPhone 5も付属LigntningーUSBケーブル→USB A端子でのデジタル接続できちんと音が出力されたのを確認した。
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