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“黒船”は意外と小回りがきく、「Hulu」に聞いた動画配信の今(1/2 ページ)

» 2013年03月25日 11時00分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 2011年9月、「黒船来航」と騒がれた「Hulu」の日本上陸。月額1480円(当時、現在は980円)でハリウッドの映画作品や海外ドラマが“見放題”となるサービスは、既存のVoD(ビデオ・オン・デマンド)サービスのみならず、市場全体に大きな影響を与えた。それから1年半が経過し、現在のHuluはどのようにサービスを展開しているのか。同社プロダクト部の福田剛部長に話を聞いた。

フールージャパン、プロダクト部の福田剛部長

 Huluは、サービス開始当初から利用者数を公表していないが、「ユーザー層は30代を中心に20〜40代が多いです。男女比率では男性のほうが若干多い程度」という。視聴環境は、テレビ、PC、モバイルが同程度で、いずれも3割前後になる。一方、視聴できるコンテンツ数は公称「1万本以上」だが、映画が「1000本以上」でテレビ番組は1万を超えているため、実際には1万1000本を超えている。

 もっとも、数だけでいえば競合に対して決して優位にあるわけではない。例えば「ひかりTV」の「ビデオサービス」は2万本以上(ベーシック見放題の対象は約6000本)、「U-NEXT」の配信動画数は6万4000本超、国内動画配信の老舗「ShowTime」に至っては13万本超をうたっている。もちろん、アダルトなど特定コンテンツの有無で数字は大きく変わるため、それだけで比較するのはナンセンス。ユーザーはそれぞれの特長や得意分野を見極める必要があるだろう。

 Huluの場合、サービス開始当初からハリウッドのメジャー映画や海外の人気ドラマ作品が大きな強みだ。それを「月額980円で見放題」という単一メニューで利用できる単純明快さも特長といえる。なお、米国では広告付きの無料プランも用意しているが、日本では市場性を考慮して設けていない。「広告モデルは、今のところ日本では好まれないと判断していますが、一方で日本に必要だと思われることは柔軟に対応していきます。例えば日本では通勤時間にスマホで見る時間も貴重。対して米国は通勤に車を使う人が多いためモバイル対応の重要度は低い。それぞれのライフモデルに合ったサービスを提供していきます」(福田氏)。

 サービス開始以来、Huluは意欲的に国内外のコンテンツホルダーとパートナーシップを結び、コンテンツ数を増やしてきた。ただし、ビデオオンデマンドが一般に広がり、コンテンツホルダーから有力な“ウィンドウ”(流通手段)の1つとして認知されはじめると、今度は同じコンテンツが各サービスに提供されるようになる。「確かに、コンテンツのラインアップが各社似たような形になるというのは、今後の課題です。われわれはパートナーシップの拡大とともに、“Huluならでは”にも力を入れています」と同氏。「例えば、米Huluが製作しているオリジナルコンテンツがあります。ほかにも『サタデー・ナイト・ライブ』は米国での放送翌日には日本でも視聴できますし、『ウォーキング・デッド』は国内放送の翌日に試聴できるようになっています。香港映画も充実しているのはHuluだけ」。

先日リリースしたApple TVの新ユーザーインタフェース。コンテンツ選択や続き再生の利便性を向上させている。なお、同社によるとApple TVは起動時に待たされず、静かで消費電力も少ないため、テレビに接続するSTBとしてはかなり人気が高いという

 もう1つ、他社との差別化策として力を入れているのが、“ユーザー体験”だ。これには視聴できるスクリーンの数(タブレットやApple TVなど視聴デバイス)とユーザーインタフェース、そしてユーザーサポートの充実といった施策が含まれる。先日、米国と同時にリリースしたApple TVの新しいユーザーインタフェースもその1つだ。「前回、Apple TV対応を始めたときには1カ月ほどの時差があり、『日本はまだ?』という問い合わせをたくさんいただきました。それ以来、米国との差異をなくすように努力しています」。

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