ラトックシステムが発売した「REX-UHPB1」は、業界の常識を覆す「30周年記念モデル」だ。なにしろ最近オーディオファンの間で話題のバランス駆動型ヘッドフォンアンプやUSB-DACをヘッドフォン本体に詰め込むという“力わざ”。しかも同社の「創立30周年記念」モデルにも関わらず、一部の部材は他機種からの流用らしい。実機を入手したので詳しく見ていこう。
「REX-UHPB1」は、パールホワイトに塗装された大柄なハウジングを持つオーバーヘッド型で、左ハウジングから延びるケーブルの先にUSBのコネクターが付いている。PCから出力されるデジタル信号を直接USBで受け取り、内蔵のUSBコントローラー兼44.1kHz/16bit対応DAC「PCM2704」でアナログ変換する仕組みだ。外付け機器や電源コンセントのいらない、手軽なPCオーディオ機器といえる。
内蔵ヘッドフォンアンプは、先に登場したバランス駆動型ヘッドフォンアンプ「REX-KEB01」とほぼ同じ構成で、TI製「TPA6111」をL/Rそれぞれに1個ずつ使用するデュアルモノラル構成。バランス駆動によりチャンネルセパレーションに優れた音楽再生を可能にしている。なお、バランス駆動のメリットについては、過去記事を参照してほしい。
このようにオーディオファン注目の要素を多く盛り込んだ「REX-UHPB1」だが、ヘッドフォン本体は流用品なのだ。リチウムイオン電池の調達が困難になって生産を中止したワイヤレスヘッドフォンの筐体(きょうたい)を使い、リチウムイオン電池を入れるはずだった部分にUSB-DACやヘッドフォンアンプ基板を組み込んだという。
このため、右ハウジングには電源ボタンやボリューム調整といった操作部が用意されているのに、ほぼ飾り(使えない)。唯一、PCと接続すると左ハウジングの「Charge」ランプが点灯する。せめて右ハウジングの「Link」ランプにしてほしかったところだが……。
ラトックでは、「REX-UHPB1」開発の経緯について、「余っていた部材を見て、試しに有線でつないで見たら面白いかなと思って」と説明する。また、“バランス駆動型アンプ内蔵ヘッドフォン”というチャレンジングな製品のため、最初はなるべく価格を抑えたいと考えたという。「オーディオ業界の“創立××周年記念モデル”と全くイメージは違いますが、幸い皆さんシャレを分かっていただけたようで、予想外に数は出ています」(同社)。
余っていた……もといベースになったヘッドフォンについて同社は多くを語らないが、ヘッドバンドの裏側を見ると、古い型番入りのシールが残っていた。2005年の夏に発売されたワイヤレスヘッドフォン「REX-WHP1P」だ。REX-WHP1Pは、信機を内蔵したヘッドフォン本体「REX-WHP1」とトランスミッター(送信機)の「REX-WHP1P」を2.4GHz帯無線でつなぐセット商品で、このためシールに残っていた型番はヘッドフォン側の「REX-WHP1」となっている。
古いシールをはがさなかったのは、技適マークが入っているため。実は両ハウジングの重量バランスや不要共振の排除のために元の基板を残しており、技適マークがないと販売できなくなってしまうのだ。
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