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フルスペックの4K出力を備えたBDレコーダー「DMR-BZT9600」、その実力を探る山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(1/2 ページ)

» 2013年10月30日 15時06分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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 この秋のオーディオビジュアル関連の新製品を一通りチェックしてみて、そのパフォーマンスに感心させられた製品はいくつもあるが、その中で「My欲しいモノ・リスト」のトップランクに位置するのが、パナソニックのブBlu-ray Discレコーダー「DMR-BZT9600」だ。筆者は歴代のパナソニック製BDレコーダーのトップエンド・モデルをずっと使い継いできたが、今秋のDMR-BZT9600の画質・音質のよさと先進性は群を抜いていると思った。

パナソニックのブBlu-ray Discレコーダーフラグシップモデル「DMR-BZT9600」

 まず本機最大のトピックが、策定されたばかりのHDMI 2.0のフルスペック対応だ。HDMI 2.0は4K/60p伝送が可能な新しい規格で、最大転送レートは18Gbps。本機は4K/60pの4:4:4(輝度信号と色差信号の比率)/24bit(各8bit)、または4:2:2/36bit(各12bit)伝送が可能なこの18Gbps高速版に対応した、この秋唯一のBDレコーダー(プレーヤー)になる。

 ちなみに、この18Gbpsの4K/60p入力が可能な家庭用ディスプレイ/プロジェクターは、現在のところ同じパナソニックの4Kテレビ「TH-L65WT600」だけ。もっともこの18Gbps版対応のHDMIケーブルはまだ市販されておらず、本機にTH-L65WT600接続用の特製HDMIケーブルが同梱(どうこん)されるようだ。なお、TH-L65WT600以外の現状すべての家庭用4Kテレビ/プロジェクターは、色差4:2:0/24bit(各8bit)の4K/60p伝送が可能な10.2Gbps対応となるが、この場合はHDMI1.4ハイスピード規格に準拠した市販のHDMIケーブルが使用可能となる。

4Kアップコンはプレーヤー側で行うのが吉?

 BD ROMやデジタル放送などの4:2:0フルHD(2K)信号の4Kアップコンバートは、川上(再生機側)で行なうほうが画質メリットが大きいというのがパナソニックの主張。HDMI上の制約ゆえフルHD(2K)信号は4:2:0で出力できず、4:2:2または4:4:4での伝送となり、ディスプレイ側で2K/4:2:0→4K/4:4:4のダイレクト変換が出来ず、伝送劣化が起こりやすいというのがその理由だ。また、本機に採用された「4Kダイレクトクロマアップコンバートplus」では、前作の「DMR-BZT9300」に比べて輝度信号と色信号のマルチタップ処理性能を1.3倍に上げて周波数特性を改善し、さらに鮮明な4Kアップコンバート映像を目指したという。

奥行きは意外と短い。外形寸法は438(幅)×239(奥行き)×77(高さ)ミリ

 また、再生機側で4Kアップコンバートするメリットとして、コンテンツに応じて最適なアップコンバート/超解像処理ができる点も見逃せない。実際われわれが4Kテレビを入手し、そこに映し出す信号はHD放送だけでなく、より高画質なBD ROMやSD画質のDVD、さらにはSD画質以下かもしれないインターネット経由の動画コンテンツまである。解像度がまちまちのそれらのコンテンツに合せて、DMR-BZT9600はそれぞれに最適なアップコンバート/超解像処理を行なえるわけで、確かにテレビ/プロジェクター側で汎用的な4Kアップコン処理を行なうよりも結果がよいというのは、容易に想像できる。

 前作DMR-BZT9300に対するアドバンス・ポイントは他にもいくつかあるが、ぜひ注目していただきたいのが1080i信号の4K/24p、4K/30p変換の進化だ。DMR-BZT9300は、HD放送の1080i →4K/24p変換のみが可能だったが、本機はBD ROMでも同変換ができるようになったのと同時に、1080i信号に乗せられた30p素材の4K/30p変換も可能となっている。

 また、画質モード(映像詳細設定の< 映像素材>)に新たに「ハイレゾ」「ハイレゾシネマ」「レトロシネマ」の3つが加わったのも注目ポイントだ。これらのモードが加わることによって、4Kマスタリング素材やふるい名画など多様な映像素材のよさを最大限引き出せるようになるからだ。これらの画質モードを設定するにあたり、担当エンジニアは数多くの映画やアニメ、ドキュメンタリー作品を改めて精査したらしく、そのエンジニアから百数十本に及ぶ作品リストの横に最適画質モードを記したプリントを渡され、彼ら設計陣の本機に賭ける思いの深さに強い感銘を受けた次第だ。

 細かなことだが、BD ROMとDVDの字幕位置の移動とその輝度調整ができるようになったのもうれしいポイント。映画の暗いシーンで字幕がまぶしく感じられることがよくあるが、本機は字幕の明るさを12段階(標準から−12まで)調整できる。

外付けノイズフィルターを付属、音にもこだわり

 DMR-BZT9600は音質改善に向けても万全の構えをとっている。まずスイッチング電源回路に前作「DMR-BZT9300」比で約2.5倍の容量を持つ平滑用電解コンデンサーや約3倍(20アンペア)の大容量スイッチングMOS FETを採用、電流供給にいっそうに余裕を持たせて、より力感のある音を目指したという。

 また、HDMI信号出力の高音質化に向けて、オーディオクロック・スタビライザーを強化(従来比64倍の長さに長周期化)、音質阻害要因となるジッター(時間軸上の揺らぎ)抑制に力を注いでいる。今何を再生しているのか、稼働中の状態に応じて不要な回路をシャットダウンさせるパナソニック独自の「インテリジェント・ローノイズシステム」も進化、DDRメモリーの停止などいっそうの徹底が図られている。

「USBパワーコンディショナー」

 興味深いのは、「USBパワーコンディショナー」と名づけられた、樹脂ケースとアルミプレートの異種素材を貼り合わせたボディ内部に抵抗とマイカコンデンサーを収めたノイズフィルターが付属していること。これを使用していないUSB-B端子に挿すことで、本体内部の電源ノイズを抑えて高音質化を図るというものだ。実際にこのUSBパワーコンディショナーのあり/なしを試してみたが、無視できない音の違いが確認できた。このフィルターを挿すとひびきの肌理が細かくなり、ピアニシモの表現がいっそう精妙になるのである。こんなところまで細かいケアを行なっているパナソニックBDレコーダー開発陣の「おもてなし」作戦に脱帽だ。

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