今年の春以降、フルHD機の4倍のパネル解像度を持つ大画面4Kテレビが各社から出そろい、話題を集めているのはご承知の通り。4Kコンテンツの入手が困難な現状を考えると、いま4Kテレビを入手する意味はないのでは? と疑義を呈する向きも当初は多かったけれど、実際大画面4Kテレビの売れ行きは業界の予想を超えて好調に推移しているようだ。
それは各社が開発した4Kアップコンバート/超解像技術が優秀で、Blu-ray DiscやHD放送を4K化して大画面で観るメリットを多くの方が認めたからだろうと思う。確かに60インチを超える大画面で良質なBDを最適視距離でフルHD機と見比べれば、4Kテレビの高精細映像の魅力に誰もが納得させられるに違いない。
一方で40〜55インチクラスのフルHD機というと、ここ数年、し烈な価格競争が続き、少しでも性能のよい良質なテレビが欲しいという方にとって、どれを選んでいいのか分からないという状況が続いていた。そんななか、筆者が注目するフルHD機のこの秋の新製品が、42V型、47V型、55V型の3サイズがそろえられた東芝“REGZA”(レグザ)の「Z8シリーズ」だ。
東芝レグザは、全録機能を持たせたタイムマシン構想で市場の評価をしっかりつかんだ観があるが、筆者がZ8シリーズをチェックしてまず驚いたのは、その画質の良さ。液晶テレビの弱点だった色の魅力を際立たせながら、コントラストのしっかりとした明快な画質を実現しているのである。今回、企画開発陣に話を聞く機会があったので、その概要を紹介しながらZ8シリーズの魅力に迫ってみたいと思う。
Z8シリーズは、3サイズともに倍速駆動タイプの視野角の広いIPSパネルが採用されている。映像信号処理を司るのは、最新の映像処理エンジン「レグザエンジンCEVO Duo」である。注目すべきは液晶パネルの真裏に広色域のLEDを配置した直下型バックライトを用いたローカルディミング(部分減光)機であること、そして700nit(1平方メートルあたりの輝度単位=700カンデラ)という驚異的な明るさを実現していることだ。
液晶テレビの急激な価格下落が始まって3〜4年経つが、同時に画質面でさまざまなメリットのある直下型LEDバックライトを組み込んだパネルモジュールはほとんど生産されなくなった。そこで東芝は、Z8シリーズに合せて直下型LEDバックライトを自社開発、青色LEDに組み合わせて白色を得る赤と緑の蛍光体を吟味し、広色域が実現できるバックライトを完成させ、IPS パネルと組み合わせたのである。担当者に聞くと、今回はLEDの光を拡散させるレンズまで自社開発したという。そんな話を聞くと、多くの製品に採用されているエッジライト型汎用パネルに比べて、Z8シリーズのパネル・コストはいったい何倍になるのだろうと思う。
4Kテレビにおいても、パネル上下や左右(またはその一方)にバックライトを配置し、導光板を組み合わせて白色を得るエッジ型バックライトが主流となっているが、直下型であればLEDの数を増やしてトータル輝度を上げていくことは簡単だし、エッジ型に比べて導光経路がシンプルなぶん液晶パネルの有効透過率が高められる。
また直下型の場合、明暗差のある同一画面内の映像の明るさをエリアごとに制御するローカルディミングをきめ細かく設定することができるのも大きなメリット。エッジ型は上下エッジライトの場合は垂直2分割、左右エッジライトの場合は水平2分割が限界になってしまう(Z8シリーズのエリア分割数は未発表)。
ちなみに企画担当者によると、「Z8シリーズ」は、4K対応の「Z8Xシリーズ」の下位モデルという位置づけではないとのこと。人間の視力、推奨視距離を勘案すると、55インチ超は4K解像度が、55インチ以下40インチ台はフルHD解像度が求められ、Z8はそのサイズに見合った最高のフルHD画質を目指したのだという。なるほど、4Kテレビが話題のこの秋、「なぜ東芝はフルHD機を大きくアピールするのだろう?」と素朴な疑問を抱いていたが、なるほど“サイズに合せたパネル解像度”か。この説明でいっぺんに腑(ふ)に落ちた次第だ。
もちろん、700nitという明るさが得られたからといって、それがイコール高画質になるわけではない。東芝技術陣は、パネルの高輝度化を高画質に結びつけた重要なポイントを2つ挙げた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR