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» 2013年11月18日 16時08分 公開

山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」:今、フルHDテレビに注目する理由──レグザ「Z8シリーズ」に見た色と明るさのブレークスルー (2/2)

[山本浩司,ITmedia]
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 1つが「ハイダイナミックレンジ復元」技術。通常の収録用カメラは、テレビ側の白トビ(白ツブレ)を防ぐために80%以上のハイライト領域を圧縮して映像信号を記録・送出している。Z8シリーズでは高輝度LEDバックライトを生かし、圧縮されたハイライト部分の階調を正確に再現することと白ピークの輝きを復元することが可能になったという。

 確かに野球中継や舞台の収録映像などで白が飛んでしまって、明部の階調が表現しきれていない場面に出くわすことは多いが、Z8シリーズのハイダイナミックレンジ復元は、そんな不満を解消してくれる重要な技術として今後クローズアップされるに違いない。

 もう1つ、画面輝度の向上によってバックライトスキャンニングの消灯時間を長く取れるようになったことも高画質化に寄与したという。バックライトスキャンニングとは、画面を垂直に何分割かして順次消灯していくことで、動画応答性を向上させる手法だ。インパルス駆動に近づき、動きのあるシーンがよりくっきりと見えるようになる。

「最明色」(さいめいしょく)とは何か?

 さて、Z8シリーズの画質を精査してもっとも感銘を受けたのが、色の美しさ、鮮やかさである。入力信号となるHD映像はITU-R BT.709というハイビジョン規格で定められた色域に則っている。この色再現範囲は、われわれが目にする現実世界の色領域よりもはるかに狭い(というかBT.709の色域は、困ったことにHD以前のSD時代に定められた色域よりも狭い)。

 Z8シリーズは先述したように、赤と緑の蛍光体を吟味した広色域バックライトを装備しており、BT.709色域よりもはるかに広い色再現領域を持っている。しかし、ただやみくもに広色域の映像を画面にそのまま映し出しても現実離れした「誰も見たことのない派手な色」が見えるだけである。そこで、東芝はZ8シリーズにおいて「最明色」(さいめいしょく)を意識した色表現という、ニューコンセプトを打ち出した。

 最明色とは何か。光の反射によって得られる物体色には、物理的な鮮やかさの限界があり、それを超えると「反射」ではなく、その物体の色自体が光っているように見えてしまう。つまり不自然な色に見えてしまうわけだ。各色によって異なるその限界値を最明色と呼ぶのである。

 東芝技術陣は、この最明色を考慮した“明るさ・色相・彩度”の6144項目の広色域復元データベースを完成させ、それを元に色空間処理を行って、画面上に鮮やかで好ましい色を出力しているという。最明色。筆者は初めて聞いた言葉だが、なるほどこのZ8の広色域管理コンセプトは実に興味深い。

 東芝REGZAの魅力の1つによくできたオートマチック画質モード「おまかせオートピクチャー」がある。映像メニュー内の画質モードを「オート」にし、照明の種類(蛍光色か電球色か)や背景(壁)の色などを指定しておけば、部屋の明るさやコンテンツの種類(スポーツ中継か映画かなど)に応じて、自動的に最適画質を提供してくれるというものだ。各社のテレビに同様の画質モードが装備されているが、完成度の高さで一頭地を抜いているのは東芝だと思う。

 また、Z8シリーズでは、Z7シリーズで計6種類(映像メニューが『ゲーム』以外でのHDMI入力時)だったコンテンツモードが計15種類に増えているのも注目ポイントだ。例えば「シネマ」の下の階層に「4KマスターBD/BD/放送/ネット動画」の4つが用意されていて、それぞれのコンテンツに見合った超解像やノイズリダクション処理が行われる。

 4:4:4(輝度信号と色差信号の比率)/各12bit出力が可能なパナソニック製BDレコーダーを用い、「55Z8」でさまざまな4Kマスタリング映画BDを観てみた。「55Z8」の映像モードは「映画プロ」、コンテンツモードは「4KマスターBD」に設定しての視聴だ。

コンテンツモードと色域設定メニュー

 「55Z8」の色の美しさ、鮮やかさに感激させられたのが、マリリン・モンロー主演の「紳士は金髪がお好き」だ。1950年代の三色法テクニカラー作品ならではのリッチな色再現に一瞬にして目を奪われた。とくにマリリンとジーン・ラッセルがまとうラメがきらきら光る真紅のドレスの描写がほんとうにすばらしく、まるで昨日撮った映像のような鮮度感が得られる。この見事に鮮やかな真紅は、歴代のレグザでも見ることのできなかったものだ。うーん、これはすごい。

 65ミリ大判フィルムで撮影されたポール・トーマス・アンダーソン監督の「ザ・マスター」の鮮烈な映像にも驚かされた。主人公のホアキン・フェニックスの顔のアップのシワ、狂気を秘めた寂しな目、そのディティールの豊かさに圧倒されてしまう。これは4:4:4/各12bitキャプチャー可能なコンテンツモード「4KマスターBD」に設定したメリットも大きいのだろう。

 ちなみに「色域設定」を「オート」(デフォルト)に設定しておけば、ソニー・ピクチャーズの「Mastered in 4K」Blu-ray Discのようにx.v.Colorのフラグが刻まれたソフトの信号が入力されると、Z8シリーズは自動的にそのコンテンツに合致した色域に合わせ込んでくれるという。


 しかし、55インチという画面サイズはつくづく微妙だと思う。60インチ以上をお買い求めになる方には今なら4Kテレビをお勧めするが、鮮烈な色の美しさをアピールする「55Z8」の映像に、個人的には4Kにも匹敵する魅力を感じてしまったのは事実だ。

 直下型バックライトを自社開発して700nitという驚異的な明るさを実現、それを高画質映像に巧みに翻案した「Z8シリーズ」。その魅力を目の当たりにし、東芝開発陣の成熟、液晶テレビの質的進化を頼もしく思った次第だ。

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