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2013年を総括! 「麻倉怜士のデジタルトップ10」(後編)麻倉怜士のデジタル閻魔帳(2/3 ページ)

» 2013年12月27日 17時03分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

第3位:ELAC BS314

――夏に「BS312」を取り上げましたが、今度は「BS314」ですか?

「BS312」

麻倉氏: 「BS312」も良い製品ですね。小さな口径(ウーファーは115ミリ径)からは想像できないほど低域が充実しています。中高域もスピードが速く、空間に放射されるエネルギーがひじょうに大きいという印象です。

「BS314」はJET Vツィーターと180ミリAS-XR LLDコーンのウーファーを搭載した2Wayバスレフ型のブックシェルフスピーカー。サイズは188(幅)×278(高さ)×375(奥行き)ミリ、重量は10.5キログラム。価格はペアで69万3000円(税込み)

 エラックの音は、緻密(ちみつ)でつやっぽく、情報量も多いイメージ。その中でも「BS314」は、まさに“エラック中のエラック”。こんなサイズなのに雄大にして締まった低音を持ち、さきほどの特長をさらに強化してまとめた印象です。ラインアップの中でも、ちょっと違ったスペシャルモデルなのです。

 そのため、使う人にもスキルを求めます。車に例えると、ポルシェのようなスポーツカー。入門用としては扱いが難しいけれど、ノウハウを持った人の手にかかると、こんなに素晴らしいものはありません。例えば、床やラックにべたっと置いても良さは出ませんが、スパイクやインシュレーターをうまく使って設置すると驚くほど変わります。使いこなしには工夫が求められますが、チャレンジする価値は十分にある。そういう種類のスピーカーですね。

 モノとしての魅力も上がりました。先代の「BS330」は前面バッフルが樹脂素材でしたが、今回は総アルミです。独自のジェットツィーターとハイブリッドコーンに代表されるエラックの技術が詰め込まれていますから、先行して新技術を投入する試験機的な意味合いもあるのではないでしょうか。

第2位:BDオーディオ「ブルックナー交響曲第4/7/8番、ケント・ナガノ指揮、バイエルン国立管弦楽団」独FARAO CLASSICS

麻倉氏: 番外として2LのBDオーディオを取り上げましたが、2013年の“音質ベスト1”は、独FARAO CLASSICSの「ブルックナー交響曲第4/7/8番 ケント・ナガノ指揮 バイエルン国立管弦楽団」です。凄すぎて、ハイレゾ音源の試聴イベントなどでこれを流すと、皆さん腰を抜かします。

BDオーディオ「ブルックナー交響曲第4/7/8番、ケント・ナガノ指揮、バイエルン国立管弦楽団」

 FARAO CLASSICSは、ミュンヘンに本拠を置くレーベルです。ミュンヘンには2つのオーケストラがあり、その1つ「バイエルン国立歌劇場」の専属オーケストラがバイエルン国立管弦楽団。ケント・ナガノさんは日系アメリカ人の指揮者で、今年までバイエルン国立管弦楽団の音楽総監督を務めていました。

 今回のタイトルは2007年の録音ですが、オーケストラの音にひじょうなる透明感があります。2chで聞くとレンジの広さや細かい音の聞こえ方など、オーディオ的なすごさがある。もともとDレンジの広いブルックナーの曲が、本当に軌跡を描くようにして盛り上がるのです。

 番外で取り上げた2Lの「SONG」も素晴らしい音ですが、アカペラです。対してこちらは大編成。5.0chで聴くと量感があり、しかも音が軽々と飛んでくるイメージです。抜群に音がいい。音場と音質って両立しにくい傾向がありますが、これは両方すばらしい。ブルックナーの分厚い響きとともに、ケントさんや各楽器奏者の姿が見えてきます。それがとても優秀な録音スタッフのおかげで体感できる。ハイレゾの大きな恩恵といえるでしょう。

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