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アナログレコードをDSD録音でカジュアルに楽しむ――ソニー「PCM-D100」の提案もう1つのソニー製ハイレゾプレーヤー?(1/2 ページ)

» 2014年02月17日 12時38分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 ソニーの「PCM-D100」は、かつて1970年代の生録ブームで注目を集めた“デンスケ”の系譜であり、現在においては同社製ICレコーダーのフラグシップモデルである。最大192kHz/24bitのリニアPCMに加え、新たにDSD 2.8MHzにも対応し、2種類のハイレゾ録音が行える。販売価格は10万円と高価だが、プロ用ならではの機能美といえるごついデザインも合わせ、気になっている人は多いのではないだろうか。

ソニー「PCM-D100」。上部にある大口径の指向性ステレオマイクは高音質“生録機”の証だ(左)。開発を担当したソニー、ホームエンタテインメント&サウンド事業本部のエレクトリカルエンジニア・橋本高明氏(右)

 しかし、開発を担当したエンジニア・橋本高明氏は、ちょっとした悩みを抱えていた。「昨年のオトテン(オーディオ&ホームシアター展)で展示したところ、多くの方に興味を持ってもらいました。でも、『いいんだけど、用途がね』という方が多くて……」(同氏)。

 確かに、楽器をやっている人か、野鳥観察でも趣味にしている人でもなければ、生録機を活用するシーンは少ない。そこで橋本氏は、2つの活用法を考えた。

 その1つが、アナログレコードを自宅でデジタル化するというものだ。「レコードを聴くときは、ジャケットと袋から取り出し、プレーヤーに載せて針を下ろす。そういった手順も情緒があって良いものですが、普段からカジュアルに聴きたいというニーズもあるでしょう。そこでPCM-D100を使い、SACDと同じDSD 2.8MHzで録音します。一度録音しておけば、DSDディスクにしてプレーヤーで再生したり、ファイルをネットワークプレーヤーで聴くなど、さまざまな形で活用できます」(同氏)。

アナログレコードが家にたくさんある人に、デジタル化してカジュアルに楽しむことを提案する。もちろん、DSDだけではなく、PCMの192kHz/24bitや96kHz/24bitでも録音して違いを楽しむのもいい。「PCM-D100」なら録音モードを変えるだけで両方活用できる

 DSD(Direct Stream Digital)は、音声信号の大小を1bitのデジタルパルスの濃度(濃淡)で表現するフォーマットで、その音質はSACDが実証済み。アナログレコードのような滑らかさとデジタルならではの透明感を合わせ持つと評価されることも多く、アナログレコードのデジタル化にはうってつけだ。事実、アナログレコードファンの中には、以前からコルグ「MR2」などを使ってDSD化を実践している人たちもいる。

 実際の手順を見せてもらった。アナログプレーヤーと接続したアンプのアナログ出力と「PCM-D100」のアナログ外部入力をケーブルで接続し、レコードを再生しつつ録音する。ここで橋本氏からワンポイントアドバイス。「録音というとアンプのテープアウト端子を使う人が多いが、テープアウトでは出力レベルが−10dBと低め。プリアウト端子を使い、好みで調整したほうが、S/N的にも有利です。またフォノイコライザーは使った方がいい」(同氏)。

「PCM-D100」の内部構造。回路基板はD/A、A/D、システム基盤が独立している。スペースに余裕がないため“3段積み”となっているが、間にシールドを兼ねた筐体の一部が入るなど、干渉を防ぐ構造だ

 「PCM-D100」では、DSD用とPCM用にそれぞれ独立したA/Dコンバーターを搭載している(PCMはデジタルリミッター用を含めて2つ)。DAC(D/Aコンバーター)のように兼用にすることもできたが、各モードの専用設計として各録音モードに特化した性能を発揮できるように設計したという。またA/DとD/Aの基板を独立させ、“3段積み”として相互の干渉を排除。マスタークロックで同期をとり、それぞれのコンバーターにクロックを分配することでジッターを抑制するなど、徹底して音質劣化を防止している。実際にDSD 2.8MHzで録音したアナログレコードの音についても、「LPの音は、ほぼほぼ再現できている」(橋本氏)。

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