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出力を高めることでたくましいサウンドを奏でる小さな巨人――「NANO-A1」潮晴男の「旬感オーディオ」(1/2 ページ)

» 2014年03月26日 11時17分 公開
[潮晴男,ITmedia]
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 デスクトップ用のスピーカーでオーディオ界へのデビューを果たしたOlasonic(オラソニック)。その後リリースされた「NANOCOMPO」(ナノコンポ)シリーズの活躍は、このコーナーでも取り上げた通りだが、コンパクトでしっかりした作りの製品は見ているだけでも愛おしくなるから不思議だ。

DACの「NANO-D1」と今回のメイン「NANO-A1」を重ねたところ

 その昔、「大きいことはいいことだ」という一世を風靡(ふうび)したテレビCMがあった。森永製菓が「エールチョコレート」に採用したキャッチフレーズだ(1967年)。ぼくと同じ年代の読者なら記憶の奥底に、このフレーズが残っているはずである。このCMは日本の経済が右肩上がりで上昇する高度成長期にぴったりの演出だった。今でもオーディオの世界では重厚長大が幅をきかす。白状すればぼくもある部分そうした志向を持っている。しかしながら、小さくて高性能ならそれはそれで大歓迎だ。

 省エネ、エコロジーという生き方にも共感する。「オーディオくらい好きにさせてよ」といいつつも、こうした製品に出会うと「そうだよな」とも思ってしまう。だけどもフィロソフィーまでエコになってしまうと、オーディオは途端にぐずる。精神論だけで良い音が出てくるわけではないからだ。そこにはある程度の物量も必要になる。

 そこで合理主義を徹底するオラソニックが次に選んだ方法論は、パワーを増強した「NANO-A1」というパワーアンプの開発だった。このモデルはUSB-DAC内蔵のプリメインアンプ「NANO-UA1」、CDドライブの「NANO-CD1」などと同じサイズのシャーシに、SCDS方式という小音量時に余る電流をコンデンサーに蓄え、バッテリー駆動に近いドライブ方式を用いることでスペック以上の表現力を身に付けている。プリメインアンプの「NANO-UA1」は4オーム負荷で26ワット+26ワットの出力だったが、「NANO-A1」はその倍以上の56ワット+56ワットという出力を備えている。パワーデバイスは同じくTI製の「TPA3118」を採用。1.2MHzという高速でスイッチングするクラスD増幅の素子を用いているが、これを2基用いてBTL接続しパワーアップを計っているのだ。

「NANO-A1」の基板(左)。電源はACアダプター(右)

 またステレオアンプとしての動作に加え、モノーラルアンプさらにはバイアンプとして、切り替えて使えることもこのモデルの特長である。モノーラルアンプ・モード時は片チャンネルだけ使用することになるが、電源事情が改善されるため、音質の改善が見込めるということである。

「MONO」「BI-AMP」「STEREO」のモードは背面のディップスイッチで切り替える。フロントからはLED表示で確認できる

 というわけで、前回やり残したことを追試の形でリポートしてみることにした。ラインアップはCDドライブの「NANO-CD1」、ヘッドフォンアンプを内蔵したUSB-DACの「NANO-D1」、パワーアンプに「NANO-A1」を組み合わせ、スピーカーにKEFの「LS-50」を使ってみた。このモデルは同社が創立50周年を記念して発売した限定版だったが、どうもその後にファンから再発売を望む声が多く寄せられたようで、この度めでたくラインアップに加わった同軸型のUni-Qユニットを用いたスピーカーだ。限定バージョンに弱いぼくは当時迷わず購入したので、ちょっと複雑な気持ちではあるが、一人占めは良くないから、そうした意味では喜んであげなくてはいけないですね。

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