ハイレゾ音源の広がりとともに、オーディオ製品への回帰現象が進んでいる。久しく静かだったメーカーから新製品が登場するのは楽しいしうれしい。ヤマハはそうしたムーブメントに先駆け、プリメインアンプの「A-S2000」とCDプレーヤーの「CD-S2000」を2007年にリリースした。昨年秋にはその上位機となる「A-S3000」と「CD-S3000」を送り出す。VUメーターをフロントパネルに組み込んだ懐かしいけど新しいデザインのプリメインアンプと、このモデルのためにオリジナルのメカまで開発した真剣勝負のCDプレーヤーを作り上げたのである。
ヘアラインのフロントパネルと美しい仕上げのつまみやスイッチ類は、オーディオの黄金時代に一世を風靡したプリメインアンプ「CA-1000」を思い起こさせる。このモデルは木製のケースに入っていたが、新世代のプリメインアンプやCDプレーヤーにも木製のサイドパネルを装着することで同様のイメージを与えている。
1970年代に発売された「CA-1000」が注目された理由は、もちろん音が良かったからだが、加えてこのモデルは京都のGKデザインが意匠を担当したことでもこだわりのユーザーの間で話題を呼んだ。以後ヤマハのオーディオ機器はGKデザインとの係わりが深くなる。近年のモデルは自社内でデザイン設計を行っているということだが、新世代機を見るにつけ過去の資産が正しく受け継がれていることがよく分かる。
ここで紹介する「A-S2100」は「A-S2000」の後継機であるとともに、「A-S3000」の姉妹機でもある。デザイン的な側面から捉えるなら、むしろ姉妹機としての色合いが濃いが、内容に関しても上位機となる「A-S3000」の物作りが展開されているため、これからユーザーになろうという人にとって、こうしたアプローチは大いに歓迎されることだろう。とはいってもプライス面でほぼ倍に近い値差があるので、その間を埋めるために合理的な選択と集中が行われている。
その1つがシャーシだ。「A-S2100」のシャーシは「A-S2000」のものを流用しているので金型代の負担はない。また電源部もほぼ同様なのでこの部分でもコストカットがなされている。「A-S3000」ではトロイダル型の電源トランスがシャーシ中央部にドンと構えていたが、「A-S2000」はEIコアの電源トランスをそのまま用いた。もっとも整流前の電源を引きまわすケーブルの径をサイズアップするなど下支え部分を強化することで、出力段に採用したMOS-FETの駆動力を高める全段ディスクリート構成のバランス伝送を実現している。
プリアンプ部分に関しても「A-S3000」のエッセンスをたっぷりと盛り込んだ。フォノイコライザー、ヘッドフォンアンプはいずれも同じ回路を持ち、スムースな動きを可能にしたボリュームにJRC製のコントロール回路を採り入れていることも同様である。またこのモデルもトーンコントロール回路は中点で完全にフラットになる設計がなされ、バイパス時には徹底した信号の純化を行っていることも特徴だ。
フロントパネルにはピークとVU動作を切り替えて表示するVUメーターが収められている。意外だったのはヤマハでVUメーターを装備したアンプは「A-S3000」が初めてだということ。「A-S2100」のメーターは「A-S3000」より一回り小ぶりだが、これが2世代目となる。両者の細かな違いを挙げるなら、メーターだけでなく、ボリュームのノブがアルミから樹脂製になっていたりといろいろあるが、7年ぶりという年月の隔たり以上に「A-S2100」は「A-S2000」から大々的な飛躍を遂げたプリメインアンプに仕上げられていることは間違いない。
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