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» 2014年10月22日 12時06分 公開

ハイレゾの“空気感”を再現する極上のイヤフォン――ソニー「XBA-Z5」誕生の軌跡 (2/3)

[山本敦,ITmedia]

 例えば、ある地域で取れた名産と呼ばれる食材、あるいは世界各国の郷土料理はその土地で食べるのが一番美味しいものだ。同じ料理を一流シェフが腕を振るう都内の三つ星レストランで食べたとしても、もちろんそれはそれで抜群に美味しいのだが何かが違う。同じ理屈を「Z5」の音を聴いた時の体験に例えるならば、ミュージシャンが演奏したステージ、あるいは録音現場で生まれた音が耳元で、極めて自然に再現されるようなリアリティと鮮度がこのイヤフォンから得ることができる。

 ハイレゾのオーケストラの音源を聴くと、鈴木氏が繰り返し語る「空気感」のニュアンスがよく分かると思う。ごく小音量で展開されるピアノや木管楽器のソロには、スコアに書かれた旋律には表れてこない緊張感がみなぎっている。楽器から音が生まれる1つ1つの瞬間に生々しさがあり、瑞々しいサウンドに鼓膜が刺激され、潤っていくのが分かる。ロックのライブ盤を聴くと、体験は時間と空間を超えて会場との一体感に包まれる。ボーカルものはナチュラルで艶めかしい口元が耳の間近で感じることができる。ジャズトリオの音源では、疾走する透明なベースラインのグルーブが何とも心地良く、ダイナミックレンジの広い豊かなピアノの音色にはっとさせられる。

XBAシリーズの上位モデル「XBA-A3」。ハウジングには樹脂素材を採用している

 同時期に発売されるHDハイブリッド3Wayドライバーを搭載する「XBA-A3」のサウンドも試聴したが、「A3」の場合は同じ楽曲をよりビビッドに、明るく強く聴かせる印象だ。低域のリズムがより力強く奏でられ、量感もよりいっそうの豊かさがある。生命力に満ちたダイナミックな演奏だ。「空気感」というコンセプトに対しては、より自然な感覚でアプローチする「Z5」に対して、「A3」では積極的に濃淡を付けてメリハリのある音が鳴らせるイヤフォンとして、リスニングスタイルに応じて上手に使い分けたい。

「Z5」ならではの音を実現するマグネシウム素材

 「Z5」のフレッシュな音の出所はどこなのか? 鈴木氏へさらに深く突っ込んで訊ねてみた。その答えは「A3」との違いにフォーカスしていくことで少しずつ見えてきた。「Z5」はハウジングとスーパーツィーターのBAドライバーの振動板にマグネシウムを使っている。その理由は「音の解像度を上げる方向でマグネシウムが非常によい効果があるから」だと鈴木氏は説明する。「A3」の振動板にはアルミニウム合金が使われている。剛性が高く、軽量性にも優れるマグネシウムはBA型ドライバーの振動板の素材として理想的だと鈴木氏は言う。特に音の余韻、間接音の再現力の部分でアルミニウム合金との差が出てくるという。

ハウジングはノズルの部分を含めてふんだんにマグネシウムが使われている

 ハウジングはノズル部も含めてふんだんにマグネシウムを使った。剛性が高まることによって、振動板の正確な動きをしっかりと支持する役割を果たしている。「ハウジングのマグネシウムは塗装を施しています。他の金属より軽いので、手に触れた際に一般的なメタル素材よりも“金属感”が伝わりにくのが特徴です。また高剛性の金属なので、薄くのばせる特徴を持っています。ハウジングの形状に加工すると、全体の大きさが圧縮できるので、わずかゼロコンマサイズ以下でのせめぎ合いではありますが、結果として耳に装着した際のフィット感が変わってきます」(和田氏)。

 確かに装着してみると軽量でフィット感もよく、マルチドライバー搭載のイヤフォンを耳に着けている感覚がほとんど感じられないほどだ。「音質はXBA-H3が非常に好評をいただいていたので、ハイブリッドの音の思想は変えることなく、ただサイズについては海外の耳穴の小さい方を中心に、若干装着しづらいという声もいただいていましたので、よりコンパクトにしたいと考えました。これはソニー独自の取り組みかもしれませんが、商品の企画・設計・デザインを一度にスタートする開発スタイルを採っていますので、『本体の構成要素を変えずに小型化する』という厳しい要件に対しても、スタッフがその理由を理解して共有しながら一体になって開発を進めることができます。結果として、最終的に皆が納得するかたちで出来上がった商品はとても良いものに仕上がります」(和田氏)。

 ほかにもケーブルのコネクター部分にわずかな角度が設けられていて、イヤフォンをループ掛けしたときにケーブルが耳のラインに沿うかたちで身に着けられる。イヤフォンの重心が安定することから、とても自然な装着感が得られるようになっている。

イヤーハンガーの部分は内部に形状記憶樹脂「テクノロート」を入れて、耳の形にぴたりと合ったフィット感を実現。柔らかく肌触りの良いシリコンでカバーしている

フラグシップヘッドフォン「MDR-Z7」と共有する高音質化技術

 今秋に発売されるソニーのヘッドフォン「MDR-Z7」と、イヤフォン「XBA-Z5」は同じ“Feel The Air”というコンセプトの元に開発された新しい「顔」だ。「Feel The Air」とは、まさに空気感を含めた細かな要素を“感じる”ことができる音楽という意味なのだろう。音づくりのイメージを共有するだけでなく、本体に使われている素材やユーザビリティーを含めたデザインの面でも「Z7」と「Z5」は沢山のプレミアムな共通点を持っている。

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