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“肌への優しさ”という新技術――ブラウンのハイエンドシェーバー「シリーズ9」滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(2/3 ページ)

» 2014年12月26日 15時25分 公開
[滝田勝紀,ITmedia]
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 「これは余談ですが……」と前置きして話を続けるホーザー氏。「ブラウンには『Sカールテクノロジー』という考え方が存在します。S字曲線のグラフを描き、縦軸をベネフィット、横軸を努力とします。この場合、ある程度開発に努力を重ねることで、最初なかなか効果が出にくかったベネフィットが、S字曲線の中央あたりで、ぐっと大きなものになることが分かります」。

 シリーズ7の『高速振動くせヒゲトリマー』を開発した当時は、まさに大きなベネフィットがあったという。ただし、1つのトリマーでは、これ以上大きなベネフィットは望めない。つまり、くせヒゲと寝ているヒゲの両方を効率的に取り去るのは難しいと判断したという。「そこで、2つのトリマーを高速振動させ、ヒゲを導入する新しい方法を考えました」(同氏)。

 2つのトリマーの役割はネーミングからだいたい想像できるが、実際はどのような仕組みになっているのだろうか。

 「まずはヘッド表面のブルーに塗られた部分が『極薄リフトアップ刃』です。刃の幅を0.4ミリ、刃の薄さを0.2ミリと従来モデルの半分にまで小さく薄くすることで、寝ているヒゲでも、より簡単に持ち上げて立たせることができるようになりました。一方、並行して配置されているのが、もう1つのトリマー『くせひげキャッチ刃』。こちらも刃の幅を0.4ミリ、刃と刃の間隔を0.3ミリと従来モデルと比較して、約2.6倍の効率でヒゲを導入することができるようになりました」。

「極薄リフトアップ刃」のイメージ

「くせひげキャッチ刃」のイメージ

 シェーバーをストロークさせる際、この2つのトリマーが連動する。「それぞれのトリマーと刃が重なる隙間を0.15マイクロメートルとしたことで、ヒゲが誘導されれば、刃が肌とヒゲの間に確実に入り込み、根元からカットできるようになりました。従来モデルより深くそれるだけでなく、1ストロークでそれるヒゲの量も大幅に向上させることに成功したのです」(同氏)。

 ちなみに、ブラウン社内には肌とカッティングシステムの相互作用を研究する部署があるという。その部署では、常にさまざまなカッティング構造を開発しては、ハイスピードカメラで撮影し、肌にあてた際のヒゲのそり方などを観察している。シリーズ9のカッティングシステムも、そういった地道な基礎研究から生み出されたという。

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