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年に一度の総決算! 「麻倉怜士のデジタルトップ10」(後編)麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/3 ページ)

» 2014年12月30日 10時00分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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第4位:加exaSoundのUSB-DAC「e22」

 第6位は、カナダに本拠を置くexaSound(エクササウンド)が作ったUSB-DAC「e22」です。

exaSoundのUSB-DAC「e22」。価格は39万9000円(税別)

 ハイレゾ再生の手法には、主にPCオーディオとネットワークオーディオがありますが、私は特にPCオーディオが好きです。ネットワークオーディオは製品を購入したらあまりいじるところがありませんが、PCオーディオはPCの設定など中もいじる余地がたくさんあります。また“DACで音が変わる”ということもよく分かります。

 昨年のデジタルトップ10でUSB-DACの「Hugo」を取り上げましたが、「e22」はそれとはまた違う良さを持っています。外観はいたって普通。重量も軽く、どちらかといえば頼りない筐体(きょうたい)でしょう。

 オーディオの常識では、ラジカセやミニコンポを底辺として高級になるほどボディーもしっかりしてくるものです。しかし、e22は、そうしたオーディオのヒエラルキーを超越した、実に緻密(ちみつ)な音の表現です。e22の音に接すると、その余りに革新的な音模様に、USB・DACの歴史はe22以前と以後で、完全に塗り替えられると思うほどです。以前のUSB・DAC製品は、いうなれば「ファンクショナル」なものといえるでしょう。それは入力されるデジタル信号を正確にアナログ信号に変える機械でした。

一見、普通のUSB-DACに見えるが……

 しかし、e22はそんな機能的な段階のものではもはや、ないように思えます。単に変換に留まらず、ハイレゾ音源からさらに音のエッセンスを引き出し、生命力、豊潤な音楽性を与えているように聞こえます。音楽の姿が見えるというか、ハイエンドオーディオに見られるような緻密な音が楽しめます。

 しかもDSDは、11.2MHzのネイティブ再生に対応します(スペック上は12.288MHzまで)。現在でもそのスペックに対応しているのは、英iFi AudioのUSB-DACか、パイオニアの「N-70A」(メーカー保証はなし)くらいでしょう。「e22」は筐体が頼りなくても音は高級――しかも2014年に発売された製品ではトップクラスのクオリティーを持つユニークな製品です。

第3位:松田聖子さん

 第3位は松田聖子さんです。

 9月にステレオサウンドから松田聖子さんの1980年代前半を代表する6タイトルがSACD化されました。また12月24日には「mora」で松田聖子さんのオリジナルアルバム全32タイトルがハイレゾ配信されることになりました。実はSACD(DSD 2.8MHz)化もハイレゾ化も初めてです。

SACD化された6タイトル

 まずSACDの音は素晴らしいです。以前のCDに比べるとベールが2枚くらいはがされた印象で、情報量もすごい。彼女の歌声には余韻があるんですが、そのときに音色を変えていることが初めて分かりました。今までは聞こえなかったのですよ。リニアPCMのハイレゾファイルはSACDとは違った意味で実に素晴らしい。解像感ではリニアPCM、艶感ではSACDといったところです。

 SACD化に際しては、スーパーバイザーを嶋護さんが、マスタリングエンジニアは鈴木浩二さんが担当しました。「SUPREME」以外の5作品は鈴木氏により、アナログのオリジナルマスターテープから直接DSD化が行われたそうです。「SUPREME」はオリジナルがデジタルマスターだったため、PCMデータからのDSD化でした。

 私もソニーの乃木坂スタジオで取材しました。スチューダーのオープンリールからイコライザーをかけず、直接SACDのエンコーダーに入力していました。もともと入っている情報が大きいので色をつけずに出したわけです。一方、ハイレゾ配信のリニアPCMも基本はフラットトランスファーです。かなり音調が異なるので、フォーマット自体の特徴の違いが楽しめると思います。SACDは11月の「インターナショナルオーディオショー」のセミナーで試聴音源として紹介したところ、セミナーが終了すると参加者の皆さんが売店に駆け込んでいましたよ。

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