最近、国内外を問わずさまざまなメーカーがロボット掃除機に参入し、その姿形も多彩になった。四角いもの、三角形のもの、D字型のものなども登場し、角を持つことで“部屋の隅”が掃除しやすくなるとアピールしている。一方、ロボット掃除機の代名詞ともなっている米iRobotの「ルンバ」は2002年に登場した初代機から一貫して丸い。
実は、米iRobotも以前は「六角形や三角形の形状」を検討したことがあったが、さまざまな検証の結果、現在の形が最も合理的であると結論付けたという。具体的には、角のない丸い形状で、中央に重心があること。高さを抑え、狭い空間にも入っていけるようにする。
角があると、狭い場所を動くときに制約が増える。例えばコーナーに入り込んでしまったとき。左右に動くことができなければ、一度下がって方向転換を行うだけのスペースを作らなければならないが、丸い形状ならその場で後退や方向転換が行える。また、角があると面積自体も小さくなるため、ダストボックスや搭載する基盤も比例して小さくせざるを得ない。
そして人の生活スペースには、ロボットにとって“罠”となるものも多い。例えばラグマットなどのマット類、日本ならコタツ布団、洋服も落ちているかもしれない。そこに乗り上げたり、入り込んだりしてしまったロボット掃除機がどうなるかを想像すれば、角を作ることのリスクに気づくだろう。角が引っかかったら身動きがとれなくなるが、丸ければ“するり”と出てくる可能性が高くなる。ルンバが丸いのは、人間の住居という活動エリアに最適化した結果だった。
狭い場所に入ることを考えれば、ロボット掃除機をもっと小型にするべきという意見は根強い。事実、国内メーカーからはルンバよりサイズの小さいロボット掃除機が登場しているが、前述の通りルンバの大きさは2002年の初代機からあまり変化していない。
13年の間には多くの技術革新もあり、より小型で効率的にゴミを吸引する機構や、小さくても同等の駆動時間を実現するバッテリーも登場している。例えば昨年登場した最上位機「800シリーズ」の新しい吸引システム「AeroForce(エアロフォース)エクストラクター」は従来のブラシに代え、特殊なゴム素材を使用した2本のローラーを用いることで、長い髪の毛や糸くずなどが全く絡まなくなった。これでルンバは、“ブラシに絡んだ髪の毛をハサミでちょきちょき切る”という面倒な作業を無用にしたのだ。
発表時に来日した米iRobotのジェリー・キャロン氏は「AeroForceエクストラクターは、2本のローラーを非常に近くに設置するため、後部に一気に隙間ができた」と話していた。それでもルンバのサイズは変わっていない。新しい技術や効率化によって獲得したスペースを、iRobotは“あるもの”を一貫して大きくすることに費やしてきたからだ。
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