「PM-3」の1つの挑戦は、従来はハイエンド機に用いられてきた平面磁界の「マニアっぽさ」を、誰でも使ってもらえるレベルにまで“落とし込む”ことだったという。「HA-2」に関しても、普通に使えるということが重要で、最新のテクノロジーを気軽に使えるということが、大きなコンセンプトとしてあった。
例えば「HA-2」に付属するUSB専用チャージャーと専用ケーブルを用いれば、従来の1.5アンペア高速充電を超える速度の“超高速充電”が可能だ。実は付属品はUSBのピン数が通常よりも多くなっており、付属品を使用してHA-2を充電した時のみ、3レーン・パラレルによる4.5アンペア給電が実現する。このため、わずか30分で70%もの充電が可能になった。
「クオリティーとデザインを両立することが重要でした」と島氏は語る。「コストパフォーマンスの高さをより多くの方に感じてもらうため、より普遍的な魅力を持たせたのが今回の2機種です。それにあたって、高性能を標ぼうする機種につきまとう『マニアックさ』を取り払う必要がありました」と島氏。「いい音であれば他は興味ありません」というメーカーの製品とは全く異なるコンセプトだという。「例えばHA-2はスマホと一緒に気軽に使ってほしいという願いから、スマホと一緒にポケットに収まるサイズで作っています。モバイルチャージャー機能も、より広いユーザーに使ってもらうためのもの。『とりあえず使おう』というくらいの気軽さで使ってもらいたいですね」(島氏)。
こうした話を聞いていると、ユーザーフレンドリーな機能やデザインが目立つが、新製品にはハイエンドを望むユーザーにとって面白いギミックもたくさんある。例えば「HA-2」の4極グラウンド分離設計の出力端子だ。左右ドライバーの両端にアンプをつないで、合計4つのアンプで駆動させるBTL(バランス)接続とは違い、内蔵されているアンプは左右1つずつの合計2つだが、クロストークの主な原因とされるグラウンドはL/Rで分離している。この設計はホームオーディオで用いられるアンプの作りそのものだ。
ボリュームはデジタル、アナログの混合構成で、デジタル部にはESS製DACチップ「ES9018K2M」の32bit内蔵ボリュームを使用した。16bitで収録されている通常のCDを聞いている限りは、ビット落ちによる音質劣化は原理的に存在せず、24bitのハイレゾ音源でも8bit分にあたる約−48dBまではビット落ちしないため、「実用的な範囲でビット落ちを気にする必要はほぼない」と島氏はいう。
「ポータブル製品において、高品質なほど大きくなるアナログボリュームにあまり良いものは使えません。品質とスペースが両立するデジタルボリュームは高級品に匹敵するハイレベルなものもあり、積極的に活用してほしい機能です」。
また、「これは私が個人的にポータブルヘッドホンアンプと組み合わせて実験したこと」と前置きしつつ、興味深いことを教えてくれた。「デジタルとアナログのボリュームで音のキャラクターが結構変わります。ボーカルなど音像感や立体感を重視するならば、デジタルボリュームは最大にして、アナログボリュームで調節したほうが良いですし、ワイドレンジさを求めるならその逆が好ましいと感じました。こういったところでオーディオ的な遊び方もできます」(島氏)。
今回の新製品はOPPO Digital Japanが当初見込んでいたよりもずっと注目度が高いという。一般ユーザーが製品版を体験した初めての機会は、2月に中野で行われた「ポタ研」で、3月20日の発売日まではなかなか製品体験の機会がなかった。それでも新製品は初回入荷分が発売前予約で完売している。島氏によると、BDプレイヤーよりも注目度が高いという。
米国本社では日本を重要なマーケットと位置付けており、ポータブルオーディオ分野は特に重要視していると島氏は話す。こうした同社の姿勢を裏付けるように、今回初めて本国以外で新製品発表イベントが行われた。今までの情報発信は全て本社からだっただけに、これは日本市場の需要性を体現したものだといえる。
「日本は単純な市場の大きさだけでなく、新技術が受け入れられるかを確認するのに適した市場ともいえます」と島氏は指摘する。「これまでOPPOは本国主体でブランド展開をしており、情報は全て本国発のものを各地域の代理店が伝えるという方式でした。そんな中で今回は日本で新製品の発表会が行われるという、非常に特殊な展開がされました。これは本国が、日本を一番注目すべき場所であると認識していることの現れ。実際、他社も含め日本市場にはいまだに強い関心が寄せられており、かつ日本に対するリスペクトも強いです」。
新しいものに関する興味関心が非常に高い日本は、世界のトレンドを先取りする場であり、新しい製品を試す場として最適だという。「OPPOは製品前のサンプルを出すことを嫌うメーカーなのですが、昨年のヘッドフォン祭やポタフェスでは完成前のサンプルを出してきました。本国は日本市場のデマンドを深く研究したいと思っていますし、日本のユーザーの意見はそれほど重要なのです」(島氏)。
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