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しゃれた外観にハイエンドの音、リンデマン「musicbook 15/55」を聴く潮晴男の「旬感オーディオ」(1/2 ページ)

» 2015年04月20日 15時24分 公開
[潮晴男ITmedia]
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 デザインに優れたオーディオ機器はたぶん良くない製品より好感を持って受け入れてもらえると思う。もちろん本質が伴わない場合はいくらデザインがよくても落第だが、基本となる性能が高ければ、不細工な物よりそうでないもののほうに誰しも気持ちが向く。

リンデマン「musicbook 15」

 3月14日に北陸新幹線が開業した。新型の車両は金沢の地場産業のモチーフにした銅色と青空をイメージしたラインが引かれ精悍(せいかん)な顔つきとともに新鮮味を感じさせる。フロント部分の曲線は木枠をもとに職人がたたき出した一品ものだ。新幹線の車両は量産しないから金型を製作するより手作りのほうがコストを抑えることができることもその理由らしい。そういえばかっていすゞ自動車が製作した「117クーペ」というスタイリッシュな車のボディも初期のモデルは手作りだった。後に量産されることになってデザインも少しだけ変更されたが、あの微妙な曲線はやはり手間暇をかけたものだけが持つ美しさである。

 LINDEMANN.(リンデマン)がリリースするUSB-DACを内蔵したCDプレイヤー「musicbook 15」と、パワーアンプの「musicbook 55」は、手作りの一品ものではないが、そうした雰囲気を感じさせる丁寧な仕事がなされている。

 横幅430ミリ、これがオーディオ製品の基準というか標準的な数値だ。そうした中にあって280ミリサイズのmusicbookは、コンパクトと称される部類に入る。小さいとある部分軽く見られがちだが、そうでないことをこの製品はシンプルなデザインと躍動的な音楽の再現力で見事に跳ね返す。

パワーアンプ「musicbook 55」

 リンデマンはノベルト・リンデマンさんが1992年、ドイツのシユタルンベルクで創業したオーディオメーカーである。現在55歳のリンデマンさんは、多くのオーディオ起業家がそうであったように、学生時代に音楽に没頭しバンドを組んでステージを重ね音に目覚めた。当時は自作派だったという彼がオーディオマニアの仲間入りをするのにそう時間はかからなかったようである。

リモコンもしゃれている

 リンデマンさんは大学を卒業した後PAの会社に就職。そこで早くも才覚を現すがやはりHi-Fiオーディオの道は捨てがたく、1980年代にはオーディオ機器の設計事務所を立ち上げ、これが母体となってメーカーへの転出を図っている。当初は比較的リーズナブルな価格のCDプレイヤーとアンプを発売していたということだが、その名前が広く日本のオーディオ・ファンに知られるようになったのは、2003年、ドイツで初となるハイエンドのSACD/CDプレーヤー「D-680」を発売してからである。

 そうした実績からして当然、彼はハイエンドの道を突き進むのだろうとぼくは勝手に予測していた。だからmusicbookの誕生に関してリンデマンさんに何か心境の変化があったのか尋ねてみた。するとこんな答えが返ってきた。「私たちが今、手がけている製品はけっして妥協したものではありません。musicbookは技術的にも回路設計についてもハイエンドそのものです」。そして彼はこうも話す。「今日の技術はクオリティーを犠牲にすることなくオーディオ製品の小型化を可能にしています」。さらに「大きくて重い機器に未来はありません」とまで付け加えた。

 だからといって彼は430ミリサイズのオーディオ機器がだめだといっているわけではない。あくまでもシャーシの中に収められた技術と回路の凝縮度の高さが明日のオーディオの扉を開くということなのだろう。

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