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オンキヨーの本気と遊び心、ずっしり重いBluetoothスピーカー「SAS200」潮晴男の「旬感オーディオ」(1/2 ページ)

» 2015年05月19日 10時30分 公開
[潮晴男ITmedia]
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 集中と選択、企業統合、連日とは言わないまでも電機業界は今こうした話題で持ち切りだ。そうした中、オンキヨーとパイオニアがホームオーディオの分野で統合を計り、オンキヨー&パイオニアマーケティングジャパンとして3月2日より正式にスタートした。一般的に2つの会社が1つになると新しい社名になるかお互いの名前を残すかのいずれかになる。残せば長くなるし新しくすれば馴染んだ呼称がなくなるが、オンキヨーとパイオニアは名前を残す決断をした。したがってブランドもそのまま。お互いの企業風土を大切にした新しい取り組みが始まったのである。

「SAS200」

 今回取り上げた製品はそのオンキヨーがリリースするポータブルワイヤレススピーカー「SAS200」だ。簡単便利なバッテリーを内蔵したBluetoothに対応する小さな音の玉手箱。サイズは180(幅)×53.5(高さ)×59(奥行き)ミリ。ちょっと大き目の蒲鉾か羊羹、あるいは小ぶりのカステラの大きさである。しかしながら実際に手に取ると“ずっしり”とした手応えだ。それもそのはず、ボディーは樹脂製ではなく、なんとアルミブロックから削り出した豪華版。さらに後述するパッシブラジエーターを取り付けるためのサブバッフルにアルミダイキャストのプレートを加えたこだわりのエンクロージャーだった。

使用イメージ。外形寸法は180(幅)×53.5(高さ)×59(奥行き)ミリ。重量は740グラム

 ぼくは常々、圧縮音声のオーディオ機器はそこそこ鳴ればそれでいい、なんて悪態をついてきたが、作り手がこんなにも正攻法に迫ってくると、こりゃあ襟を正して聴かなければと、背筋を伸ばしてしまった。正直なところ、この手の製品に大きな期待は禁物だ。過去の体験からすると「こんなもんかな」が、大半だった。ところがSAS200は予想外に頑張る。iPhoneからBluetoothで音源を飛ばしてボリュームを上げると、ペナぺナした音ではなくちゃんとした厚みのある音を聴かせる。

ブラックとシルバーのカラーバリエーションがある

 コンパクトでBluetoothに対応した製品は大抵薄口で“なよっ”とした、心許ないサウンドを奏でる。奏でるといえば聞こえはいいが、まぁ何とか音が出せるといったほうがいいかもしれない。基本的にそれだけの能力しか持ち合わせがないということだ。ところがSAS200は、しっかりとした質感を再現する。それはエンクロージャーだけでなくスピーカーのユニットとそのユニットの能力を引き出すパッシブラジエーターを配した作り込み、そして駆動するアンプの選び方によるものだ。

スピーカーユニットは40ミリ径

 ユニットの外形はわずか40ミリ。オーディオの常識からすればこのサイズは高音域を受け持つツィーターのサイズだ。にもかかわらずちゃんと低音感もキープしている。その手ごたえのある感じが小さな巨人を演出するが、ことここに至るまでは苦難の連続だったようだ。スピーカーの振動板にはマイカを混入したポリプピレンを用いて剛性を高めたり、通称“エッジ”と呼ばれるサラウンド部分にエラストマーを使ってしなやかさを持たせたのである。またサラウンドと振動板の境界面には小さな凹を設けて共振を防止。センタードームは砲弾型にして高域特性を伸ばすなどユニット1つとっても随所に工夫の跡がうかがえる。

 さらにこのユニットの特性を低域に向ってバックアップすべくパッシブラジエーターを装備した。エンクロージャーの背面にセットしたアルミダイキャスト製のプレートは、このラジエーターを支えるために用意したものである。さらにパッシブラジエーターには質量を稼ぐためにエラストマーをコーティングしたスチール製の振動板がビルトインしたのである。そしてエンクロージャーの両サイドに設けられたダクトから低音域だけを取り出すことに成功している。

 このスピーカーを駆動するのはTI製のクラスD増幅アンプ。出力は10ワット+10ワットだが、スピーカーの動作状態を監視し瞬間的なパワーを高めるスマートアンプシステムという信号処理回路を与えてダイナミズムあふれるサウンドを再現するのである。Bluetoothの送受信は標準となるSBCに加えdtsの原型であるapt-X方式を加えて高音質化にもトライしている。音にうるさいユーザーならお分かりの通り、SBCの音はけっして芳しくない。だからこそ彼らはapt-Xも加えて1/4の圧縮という高レート転送の実現と遅延時間の低減をおこなったのである。

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