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課題も残るがデキは上々――HDR対応4Kテレビ、東芝「58Z20X」とシャープ「LC-70XG35」を徹底比較山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(2/3 ページ)

» 2015年10月27日 09時00分 公開
[山本浩司ITmedia]

 画面輝度の向上も著しい。本機は高出力LEDバックライトの採用により最大輝度1000nits(全白で800nits)を実現しており、PQカーブの採用とHDMI2.0ハイスピード伝送(18Mbps)対応も果たし、UHD BDのHDRコンテンツへの対応も万全だ。

 加えて、通常のSDR (スタンダード・ダイナミックレンジ)コンテンツをHDRライクな映像で表示する「アドバンスドHDR復元プロ」回路が新たに採用された。これは収録カメラごとに異なる高輝度領域の圧縮度合いを256階調の輝度ヒストグラムの形状判定と面積分布を元に高精度に圧縮率を類推、原画に近い階調表現と色再現を実現しようというもの。実際にこの機能をオン/オフしながら明るい海岸風景を捉えたSDRの4K映像をチェックしてみたが、オンにすることで白ツブレやハイライトの色ヌケがなくなり、ネイティブHDRコンテンツを眺めているかのようなリッチでゴージャスな高精細映像を楽しむことができた。

「アドバンスドHDR復元プロ」の概要

  58Z20Xは、色再現能力においても大きな進化が認められる。採用されたLEDバックライトがBT.2020規格を80%カバーする広色域タイプ(Z10X比170%の色再現能力)であることにまず注目すべきだが、最明色(物体色の限界)を考慮した東芝オリジナルの6144項目の色復元データベースを参照しながら、64色軸の高精度色空間処理回路を用いて低彩度部の補正機能を強化したという。

 確かにそのバランスのよい色合いは「映画プロ」モードでおおいに魅力を発揮している。平均輝度レベルがきわめて低い映画BDの夜のシーンなどでも、液晶テレビとは思えない暗部の色ヌケが少ない精妙な色再現を見せ、筆者を驚かせたのだった。このようなデータベースを活用した高画質技術には刮目(かつもく)すべきインテリジェンスが秘められており、東芝という会社の底知れぬ実力の高さを実感させられるところだ(前経営陣は問題大アリでしたけどね)。

 もう1つ画質面で大きな魅力となっているのが、輪郭の滑らかさだ。これは新しく採用された「マルチアングル自己合同性超解像」回路の採用が効いている。従来の垂直方向に加えて水平方向の自己合同性超解像処理が入り、0度から約90度(従来は0度から45度)までの斜めエッジのギザギザを解消している。これはとくにDVDや地デジなどの画質が劣るコンテンツで威力を発揮するはずだ。

 58Z20Xの内蔵スピーカーはフルレンジ+ツィーターの2Way構成で画面下部に配置される。興味深いのは6kHz以上を受け持つツィーターの振動板に物性値に優れた樹脂素材ノーメックスを採用、それを上向きに配置しホーンロードをかけるというアイデアが採用されていることだ。言うまでもなく台詞やアナウンスの明瞭度を上げることを考えてのことだろう。

オプションの専用外部スピーカー「RSS-AZ55」

加えて「RSS-AZ55」というレグザ専用外部スピーカーが用意されていることにも注目したい。これはステレオスピーカーとサブウーファーで構成される2.1chシステムで、Z20Xのスタンド後方に置くことを想定して設計されているが、興味深いのは先述した本体のノーメックス製ツィーターを生かした3Way駆動が可能なことだ。RSS-AZ55は実質3万円弱という安価なシステムだが、本機を加える効果は絶大。内蔵スピーカーのプアーなサウンドが一変、中低域の充実した本格的な小気味よい音に変貌するのである。本体のノーメックス製ツィーターとの連携にも違和感はない。Z20Xを本格的なAVシステムと組み合わせる場合は別だが、「テレビ」としてお使いになる方にとってRSS-AZ55の導入は必須と断言したい。

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