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とてつもなくピュアな「ETHER」、歌声が魅力の「ETHER C」――MrSpeakersのヘッドフォンを聴き比べ野村ケンジのぶらんにゅ〜AV Review(1/2 ページ)

» 2016年02月05日 12時42分 公開
[野村ケンジITmedia]
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 ここ数年、毎年300機種以上のヘッドフォン、イヤフォンを試聴させてもらえる機会に恵まれていて、おかげで日本国内で販売されている主要モデルは、だいたいはフォローできている。とはいえ、年に200モデル以上の新製品が登場している昨今、運悪く聴きそびれてしまう機種も少なからずあったりもする。そんな製品の1つ、聴きたい聴きたいと思いつつも運悪く今日まで聴きそびれてしまっていたのが、MrSpeakersのヘッドフォン「ETHER」シリーズだ。

MrSpeakersのヘッドフォン「ETHER」シリーズ

 さて、MrSpeakersというメーカーを知っている人は、それほど居ないことだろう。かくいう筆者も最初は分からなかった。それもそのはず、MrSpeakersは2013年4月に創設されたばかりのヘッドフォン専業メーカーで、この「ETHER」シリーズが初めてのオリジナルモデルとなるからだ。とはいえ、メーカーについての詳細情報を知ったとたん繋がったのだが、実はこのMrSpeakers、平面振動板を採用するフォステクスのプロモニター「T50RP」を改造する“MODヘッドフォン”で(マニアのあいだでは)有名なブランドなのだ。

 さらに、オーナーのDan Clark氏は、Platinum Audio speakersを初めとする、20年にも上るオーディオ関連企業でのキャリアを持つ人物。T50RP“MOD”の評判はもちろんのこと、(彼がいた時代より古いフィル・ジョーンズ作ながら)Platinum製スピーカーを所有する筆者としては、そんな履歴を持つ彼の作りあげたサウンドが大いに気になるところ。ということで、今回試聴レビューをお届けすることにした。

 さて、このMrSpeakers「ETHER」シリーズは、開放型ハウジングを持つ「ETHER」と密閉型ハウジングの「ETHER C」という、2モデルがラインアップ。基本的な部分はどちらも共通となっていて、外観からもハウジング以外に大きな違いは見られない。とはいえ、ハウジングの形状や素材が異なっていることもあってか、見かけの雰囲気はかなり違う。開放型の「ETHER」は、海外のヘッドフォンマニアのあいだでは絶大な人気を誇るAUDEZEに近い雰囲気にも感じられるが、一方の密閉型「ETHER C」は、ユニークな形状のカーボン製ハウジングのおかげもあってか、幾分スポーティーな雰囲気をたたえている。

開放型の「ETHER」はAUDEZEに近い雰囲気
密閉型の「ETHER C」のカーボン製ハウジング

 しかしながら、「ETHER」シリーズ最大のトピックといえば、やはり特許技術を用いた新設計の平面振動板ユニット「V-Planar振動板」だろう。振動板自体に特殊なローレット加工を施し、アコーディオンのようなひだひだを無数に設けることで、ダイヤフラムの追従性(柔軟性)を高め、ドライバーユニットの非線形歪(ひずみ)を大きく減少させているという。

 また、軽量さも「ETHER」シリーズの特徴の1つといえる。先に名の出たAUDEZEをはじめ、スタンダードスタイルの平面振動板ヘッドフォンはかなりの大柄&重量モデルとなっているが、「ETHER」シリーズでは、形状記憶合金として産業・医療などさまざまな分野で活用されているニッケル・チタン合金(ニチノールとも呼ばれる)をヘッドバンド素材として採用。「ETHER」で375g、「ETHER C」394gという、このカテゴリーの製品としてはかなりの軽量さを誇っている。ラムレザー製の厚手のイヤーパッドと相まって、装着感は軽快といっていいレベルだし、何よりも、手に取ったときにガチャガチャとパーツが遊ばず、上質な感じを持ち合わせているのがいい。確かに、音質は最優先すべきだが、こういった手に取ったときの質感が良いことも、高級モデルでは重要なポイントといえる。


ケーブルは左右両出しの着脱式

 ケーブルは、左右両出しの着脱式となっている。接続コネクターはあまり見ないやや大きめのタイプだが、しっかりしていて良い。オプションとして、XLR 4pinや2.5mm4極などのバランス接続ケーブルが用意されているのもうれしい限りだ。

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