欧州で発表された約1000ユーロのパナソニック製UHD BDプレーヤー「DMP-UB900」が6月頃に日本で発売され、それに合わせてハリウッド製Ultra HD Blu-rayがわが国に登場するとの“噂”もあるが、その事実確認は現在のところ取れていない。
4K解像度に加えて、従来のSDR(スタンダードダイナミックレンジ=最大100nits)に比べて明暗比が大きく向上したHDR 仕様(最大1万nits)であること、物体色のカバー率が約75%のBT.709色域から99.9%のBT.2020色域へと色再現能力が大幅に向上したことがUltra HD Blu-rayの注目ポイントだが、現状では1万nitsとBT.2020 色域を実現した4Kテレビ/4Kプロジェクターは存在しない(もっとも1万nitsが実現されたとしても、まぶしくて見ていられないとは思うが)。
HDR対応をうたっている4Kテレビ/4Kプロジェクターは、HDRによる明暗比の拡大に合わせて考案されたガンマカーブ「PQカーブ」を採用し、BT.2020 色域の入力信号に対して色が歪まないように最適化した色空間処理を行うことが重要なポイントとなる。
ぼくが自室で愛用している4Kプロジェクターのソニー「VPL-VW500ES」は残念ながらHDRに対応していない。ただしSDR仕様のディスプレイ/プロジェクターでも、もちろん問題なくUltra HD Blu-rayの映像を観ることはできる。プレーヤーのパナソニックDMR-UBZ1側でHD→SD、BT.2020→BT.709、PQカーブ→従来の基準ガンマカーブ(2.4乗)という変換処理を経てHDMI出力されるからだ。
このUBZ1&VW500ESコンビで7作品を観てみたが、Ultra HD Blu-rayが史上最強の高画質メディアであることをすぐに理解した。
ぼくはふだん自室で4K放送(スカパー4K)や4K配信(NETFLIX)のコンテンツを観ているが、Ultra HD Blu-rayはすべての画質ファクター(解像感、S/N 、コントラスト感など)でそれらを凌駕していることは間違いない。SDR 変換画質を観ているわけだから、Ultra HD Blu-rayのほんとうの実力はまったく発揮されていないともいえるが、転送レートが圧倒的に高い有利さは明白だ(映像の平均レートは70〜80Mbpsで最大レートは100Mbps 。ちなみにNETFLIXの4Kコンテンツは平均10〜15Mbps)。
まず強く印象づけられるのが映像情報の増大だ。とくに人肌のテクスチャー表現などの繊細さには息をのむ。同梱された現行BDを取り出して再生し、その画質との比較もしてみたが、DMR-UBZ1の4Kアップコンバート性能もかなり優秀なので、小画面ではその差は小さく感じられるかもしれない。しかし、我が家の110インチスクリーンでは、ロングショットの見通しや登場人物をアップで捉えたシーンの立体感などでUltra HD Blu-rayの優位は動かないことが分かった。
ところでDMR-UBZ1は、HDRに対応していないテレビ/プロジェクターでもHDRライクな映像が楽しめる調整機能を有している。それが「ダイナミックレンジ変換調整」機能である。
HDRの魅力は、白ピークが伸びることで映像に力感が付与されると一般には理解されている。もちろんそれはその通りなのだが、映画コンテンツを観るうえでそれ以上にメリットが大きいと思えるのが、明部(ハイライト)階調がいっそう精妙になること、それによって明部にしっかりと色情報が乗っかることだ。
DMR-UBZ1の「ダイナミックレンジ変換調整」をマイナス方向に寄せていくと、その明部の情報が浮き上がる効果が実感できるのである。例えば「エクソダス: 神と王」の不穏な動きを見せる曇天のディティールがこの調整でいっそう明らかになったりするのだ。
しかし、この機能をマイナス調整していくと、当然ながら画像全体が暗くなって、HDRのもう一方の魅力ポイントである白ピークの伸びが抑えられてしまう。しかし、DMR-UBZ1には「明るさ」という調整項目もあり、この調整値をプラス方向にもっていくことで、白ピークの伸びを復元できるようになるのである。
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