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すべては“かまど炊きを超える”ために――パナソニックの地道すぎる技術開発とは?滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(2/3 ページ)

» 2016年03月31日 15時26分 公開
[滝田勝紀ITmedia]

 これまでパナソニックは高温スチームや6段全面IHなど、さまざまな業界初の技術を採用してきたが、現在の炊飯器の美味しさを最も象徴する技術といえば、「Wおどり炊き」だろう。これは元々パナソニックのIH技術による実現していた熱対流技術と、旧三洋電機が誇っていた可変圧力技術をバランスよく融合したものであり、2013年の「SR-SPX3シリーズ」から採用されている。今回の「SR-SPX6シリーズ」にも当然その技術は入っており、お米1粒1粒の甘み、旨み、香りをしっかりと抽出している。

熱対流技術と可変圧力技術の融合が「Wおどり炊き」。可変圧力技術は内釜の加圧と減圧を繰り返すことでごはんをおどらせる

 今回の注目ポイントは、その「Wおどり炊き」の進化をさせるために「圧力コントロール機能」を加えたところだ。「圧力コントロール機能」とは、炊飯時の沸騰維持工程の後半に、内釜内の水量が減ってきた時に、圧力弁をゆっくりと動かすことで、お米を粒表面を崩すことなく踊らせる手法だ。それにより、「Wおどり炊き」のおどり総パワーが27%アップするとともに、“おねば”の糖度が高まり、甘みが約10%アップした。

赤い丸の部分が圧力弁。これまでは7〜8秒程度で規則的に開いたり閉じたりしていたが、「圧力コントロール機能」により、沸騰維持工程の後半になって内釜の水が少なくなることをセンサーで検知すると、弁が30秒ぐらいかけてゆっくりと閉じ、ゆっくりと開く動きに変わる

 追い炊き時にもこの「圧力コントロール機能」が美味しさを引き上げる。おどり状態でごはんとごはん1粒1粒の間に、より空気層を多く作ることで、独自の「220度IHスチーム」もよりまんべんなく行き渡らせることができる。ごはんの表面のベタつきを約54%も下げることで、ごはんの粒感が大幅にアップし、ごはんの噛み応えもよりよくなった。

「圧力コントロール機能」

内釜も地道に進化

 炊飯器の命である内釜も地道に進化していることが分かる。適度な軽量性、耐久性はもちろん、熱伝導率と保温性が高いことで定評がある「ダイヤモンド竃(かまど)釜」だ。以前から6層構造で形成されているが、そのもっとも内側の層である「ダイヤモンドプレミアムコート」をより進化させた。トップコートが2倍に厚くなったことで、強度が増し、これまで3年保証だったが、今回の新モデルでは5年保証を実現した。

「ダイヤモンド竃(かまど)釜」

内側から「ダイヤモンドプレミアムコート」「高熱伝導層アルミ」「高発熱層パワフルステンレス」「高断熱中空セラミックス」「高硬度中空セラミックス」「金色塗装」の6層構造

内釜の製造工程もかなり複雑だ。1枚のアルミとステンレスを合わせたサークル材をプレスするところから、かなりの工程を辿る。写真は、2年ほど前に兵庫県にある炊飯器工場(加東工場)を訪ねた際に撮影した塗装工程。塗装だけで全部で5工程存在し、すべて自動化されていた

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