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Ultra HD Blu-rayの実力を堪能できる4Kテレビはコレだ!(前編)山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(2/3 ページ)

» 2016年04月25日 14時58分 公開
[山本浩司ITmedia]

パナソニック「DX950シリーズ」で知るUHD BD画質の本当の凄さ

 パナソニックとLGはともに、次世代テレビの指針を決める「UHD アライアンス」をリードする幹事会社だ(テレビメーカーではほかにソニー、サムソン、シャープ、東芝はそのコントリビューターという立場になる)。このUHD アライアンスがUHD BDなどハイダイナミックレンジ(HDR)対応の4Kコンテンツを再生するのに相応しい表示機器や再生機、映像サービスなどの技術基準を策定し、それをクリアーしたものをUltra HD Premiumと呼ぶことになっている。

 Ultra HD Premiumテレビの条件は、4K解像度、10bit信号処理、BT.2020準拠でDCI-P3色域に対して90%以上カバーすることの他、HDR(ハイダイナミックレンジ)表示の条件として、液晶タイプはピーク輝度1000nits 、黒レベル0.05nits(コントラスト比換算で2万:1)を、有機ELタイプはピーク輝度540nits、黒レベル0.0005nits(コントラスト比換算で108万:1)を実現する必要があるとした。

 65V型と58V型の2モデル展開となるパナソニックの「DX950シリーズ」は液晶タイプで、正面コントラストに優れたVAパネル&直下型LED バックライト採用のローカルディミング(部分減光)機。先述したUltra HD Premiumの条件をすべてクリアーした、パナソニック入魂の高級モデルといっていいだろう。

パナソニックの「DX950シリーズ」

 HDRコンテンツ表示に必要なPQカーブを表示パネルの特性にアジャストさせ、白ピーク1000nits以上を実現し、青色LEDと組み合わせる緑と赤の蛍光体のうち後者に新素材を投入して色域を広げ、BT.2020の色空間の80%をカバーするという。

 画質をチェックして驚嘆したのは、そのコントラスト性能と色合いのすばらしさだ。例えば、UHD BDの米国盤「THE LAST WITCH HUNTER」のオープニング・シーン。中世ヨーロッパの殺伐とした寒村の洞窟に、魔女を退治するために松明をなかざしながら入っていくハンターたち。TH-65DX950は漆黒の闇をしっかりと描写しながら、突如現れる吸血鬼の不気味な表情を細密に描いていくのである。その暗部階調の精妙さにまず感心させられた。ハンターたちが持つ松明の赤い光も実にパワフルで力強い。ローカルディミングのもう1つのメリットである“白の突き上げ”が見事に効果を上げていることが分かる映像だ。

 そうか、これこそUHD BD画質の本当の凄さなのだナ……と納得させられた瞬間だった。正直いって、家庭用の液晶大画面テレビでこれほどの表現力を持った製品に出会ったのは初めてである。

 本機のローカルディミングの分割数は、従来モデルのAX900シリーズの約4倍ときめ細かい。それに加えてLEDの間に井桁構造の隔壁を設け、隣接したLEDの光の干渉を防ぐ工夫が新たに取り入れられている。

井桁構造のイメージ

 確かにこの効果は目覚ましく、隣接エリアへの光漏れが抑えられたことで黒の黒らしさが際立つのと同時に、平均輝度レベルの低い場面で白ピークの周囲がボワッとにじむハロー現象も極小化されていることが分かる。

 またPHL(Panasonic Hollywood Laboratory)などで長年培ってきた、同社ならではのハリウッドの制作現場との強い結びつきを生かした、映画ポジションの画質管理も見事なもの。ソニー製マスターモニターBVM-X300を傍らに置いて見比べてみたが、色再現などまさにマスターモニターそのままの味わいといってよい。もっとも映像の緻密(ちみつ)さや画素自体のパワー感などは、自発光のマスターモニターにかなわないか……と、300万円超えの30型有機ELモニターとの違いを言及したくなるくらいの画質なのである。

 いずれにしても、やっとUHD BDの魅力を十全に引き出せる大画面液晶テレビが登場してきたわけで、本機が今後のHDR 対応4Kテレビのメルクマールになることは間違いないだろう。そんな感慨を抱くほど本機の画質はすばらしい。

 問題はVAパネルの宿命的な課題である視野角の狭さ。画面正面から少しずれると、コントラストが低下し、色合いが不自然になってしまうという欠点から逃れられていない。

 もう1つ物足りないのは音質だ。本機の下位の「DX850シリーズ」は、画面両サイドに本格的なステレオスピーカーが搭載されているが、DX950はアンダースピーカー・タイプで声が画面下から聞こえて映像と音像が一致しないという問題があるうえ、その音もやせてハイ上がりで力感に乏しい。

 DX950を購入する高感度なユーザーは外部スピーカーを使用するのでは? ということかもしれないが、下位モデルよりも音質が劣るという商品企画には同意できないというのが、筆者の見解だ。

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