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一味違うヘッドフォンはいかが?――さまざまな駆動方式の注目4モデル春のヘッドフォン祭2016(1/2 ページ)

» 2016年05月02日 15時13分 公開
[天野透ITmedia]

 ゴールデンウィークの開始を告げる快晴の中、東京「中野サンプラザ」で開かれた恒例の「春のヘッドフォン祭り」。世界各国のイヤフォン・ヘッドフォンが集まる中、今回は駆動方式がさまざまなオーバーイヤーヘッドフォン4モデルにフォーカスを当ててみた。普通のヘッドフォンに飽きてきたそこのアナタ、こんな変わり種はいかが?

現代に蘇った銘機 ULTRASONE 「Tribute 7」

 まずはオーソドックスなダイナミック型から。ヘッドフォン祭りのカタログやホームページなどでは、会場で初公開となる新製品がイベントの顔を飾ることが恒例となっているが、今回の“顔”は独ULTRASONEから2004年に発売された名機「EDITION 7」のトリビュートモデルとして公開された、その名も「Tribute 7」だった。

現代に蘇ったULTRAZONEの名機「Tribute 7」。12年分の技術革新やユーザーからのフィードバックがつめ込まれている

 同機は現在の技術でEDITION 7を復刻することを目指して開発されたもので、外観と周波数特性はEDITION 7に寄せた設計となっている。市場予想価格は38万円。なお、発売は5月16日と予告されていたが、本国で部品に技術的なトラブルが発生し、製造をやり直すことになったため、世界的に出荷を延期。発売時期は未定としている。

 オリジナルのEDITION 7が発売されてから12年、ただ単に復刻をするだけではなく、現在のニーズや技術に合わせて作られている。例えばEDITION 7のケーブルは6.3mmプラグで白色の長い直付けだったが、ポータブルユースが主流になってきたことやリケーブルが一般的になってきたことのほか、EDITION 7のユーザーから「白色は汚れが目立つ」といった意見が挙がったことなどから、今回はシルバーコートOFCの3.5mm着脱式アンバランスケーブルが同梱(どうこん)されている。

「Tribute 7」(左)と「EDITION 7」(右)の比較。ULTRAZONEの独自技術“S-LOGIC”が最新版に更新されたほか、イヤーカップがメッキの樹脂からアルミ削り出しに変わり、色もTribute 7の方が明るい青になっている。ケーブルの長さやプラグ形状の違いなどに12年間のトレンドの差を感じる

 Tribute 7は世界777本の限定生産モデルだが、元になったEDITION 7の修理が現在でも持ち込まれることがあるということで、国内の販売元となるタイムロードでは、「10年以上は補修部品を持つようにしたい」と話している。

“選ばれた人”のための静電型ヘッドフォン、Sennheiser「HE-1」

 ドイツの老舗、Sennheiser‎(ゼンハイザー)は参考出展として静電駆動型ヘッドフォン「HE-1」を持ち込んだ。HE-1は同社の超弩級静電型モデル「Orpheus」(オルフェウス)の後継機として位置付けられているモデル。価格は税別で5万ユーロとアナウンスされており、開催日のレートで換算すると600万円を超えるという前代未聞のプライスタグが付いている。

抽選で“選ばれた人”のみが試聴を許された超弩級静電駆動ヘッドフォン「HE-1」。イタリア産大理石やオリジナル真空管などのぜいたくなマテリアルを惜しげもなく投入し、完全ハンドメイドで生産される。その価格は高級車と張り合う5万ユーロで、日本円換算では600万円オーバー。手に入れられるのは経済的に「選ばれた人」のみ……?

 HE-1は現在も開発が続いており、今回はプロトタイプ機が本国ドイツから日本へ持ち込まれた。当然、日本に1台しか存在しないため、一般参加者で試聴が出来たのは事前の抽選で選ばれたおよそ70人のみ。この抽選は受付開始と同時に速攻で100人を超える応募があったため、即日で募集が締め切られたという。

 今回の展示にあたってゼンハイザージャパンは、メインブースとは別に専用の試聴室を用意した。視聴時間は1人あたりわずか5分、選ばれた幸運な参加者は限られた時間の中、思い思いの音源を持ち寄って、究極の静電駆動機を体験した。試聴機は現在、世界中のイベントで公開される、いわばワールドツアー中で、今回は”日本公演”。次はシンガポールへ向かい、6月からは国内の7都市で各イベント一般公開をするという。

 昨年から開発機を本国で試聴してきたゼンハイザージャパンの渡辺直樹氏によると、昨年の夏にドイツで試聴した時と比較して随分と音が変わったという。渡辺氏は音の印象を「初期の頃はHD650に近かったのですが、今回のものはHD800の色も出てきました。でもやり過ぎなほどの空間感は抑えられたと思います」と話す。新規開発された真空管などはこのまま製品版となるが、DACチップや背面パネルなどは変更の可能性があり、年内に予定されている発売まで進化を続けるという。

専用駆動アンプのバックパネル。正式決定ではなく暫定版で、ここだけではなくDACチップなども変更される可能性があるという

 「HE-1は、新規設計の真空管やイタリア産の大理石など、あらゆる面で従来の製品とは一線を画するモデルです。生産はハノーファーの本社工場での完全ハンドメイドで、丸一日以上の工程を経て組み立てられます。今回ご披露したものも細かい部分はまだまだ改善の余地があるんですけれど、海外から見ると日本市場は特殊で、そういった細かい部分を改善しないと絶対に支持されないですね。正真正銘のハイエンドモデルですから、もちろん突っ込まれるような部分は許されないですし、わずかでもそんな部分が見られるならばお客様にお届けしたくありません」(渡辺氏)

 なお、予約については、独ゼンハイザーの専用ホームページでプレリザーブを行う必要がある。「詳細が未だ定まっていない上に価格が価格のため、日本からのオーダーはまだありませんが、ワールドワイドでは既に40件ほどご予約を頂いているそうです。年内の発売を目指していますが、できれば秋のイベントシーズンでは、製品版を披露できるようにしたいですね」(同氏)

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