文部科学省が小中高校生において「プログラミング教育」の必修化を決めた。2020年度から小学校で実施、2021年度に中学校、2022年度には高校で順次選択制を必修に改める予定だという。
これをきっかけに実際の教育現場では、小中高校生にどのように情報やITに関わる授業を行うべきなのか、議論や試行錯誤が続いている。必修ではないが、既にゲーム感覚で情報の授業を行っている学校もあり、中には音声合成ソフト「VOCALOID(ボーカロイド)」を使った授業を行う高校もあるという。
2016年5月18日から20日まで東京ビッグサイトでは「第7回教育ITソリューションEXPO」が行われている。理数教育の最新教材をはじめ、アプリ学習の事例など、さまざまな展示が見られるが、中でも「高校におけるVOCALOID(ボーカロイド)を用いた音声処理の実習事例」と掲げられたブースに記者の目がとまった。
楽器の販売やリース、防音室の開発などを行うあの、ヤマハミュージックジャパンだ。
ボーカロイドとは、ヤマハが開発した音声合成技術・ソフト。確かに、ボーカロイドを使えば、メロディーと歌詞を編集し、音声入りの楽曲制作が可能となる。だが、高校のIT教育の一環とはいえ、作曲経験のない高校生に扱えるのだろうか?
今回は、実際にボーカロイドを授業に取り入れた教師である大沼祐太さんの貴重な講演を聞くことができたので、実例を紹介していきたい。
大沼 自由が丘にある「玉川聖学院」で教師をやっております、大沼と申します。玉川聖学院は女子高で、キリスト教のミッションスクールです。情報化に伴いもともとは「選択情報」という科目で情報の授業を高校生に向けて行っていたのですが、生徒から「ボーカロイドを授業で使ってみたい」という意見がありました。その後、1台だけ試験的にPCに入れたところ、とても楽しんで生徒が使ったので「これは教育のツールとして活用できるのでは?」と思い、この科目で使うPC全てにボーカロイドを導入しました。
学校としても教育の観点から、実際に歌声が合成され、自分で苦労して作った作品が音声データとして残るので、体験しつつ学べることが魅力だったという。
下記が、実際にボーカロイドの初音ミクを導入した、玉川聖学院の情報の授業の実績である。
大沼 初音ミクで学校CMを作った翌年は「VOCALOID3」である「結月ゆかり」の体験版を使って音声合成のみの実習を行ったのですが、本格的に活用しようということで、2014年にボーカロイドとDAWソフト「Cubase(キューベース)」がセットになった「VOCALOID Editor for Cubase」を授業に導入しました。
VOCALOID Editor for Cubaseは音やミキシングを全てソフトウェア上で完結できるDAW(Digital Audio Workstation)ソフト。「ボーカロイドで作った音声ライブラリを編集し、より自作曲がしやすい環境を整えた」と大沼さんはいう。
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