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コラム
» 2016年05月19日 06時00分 公開

授業に“ボカロ作曲”を取り入れた高校 課題「初音ミクに校歌を歌わせなさい」 (2/2)

[鈴木美雪,ITmedia]
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ボーカロイドで作曲を行う「ボカロP」を先生として招待

大沼 1時間目は「音のデジタル化」についてプリントを使いながら座学を行いますが、2時間目は早速実習に入って生徒にボーカロイドの操作に慣れてもらうための練習問題をやります。

ボーカロイド VOCALOID 教育 IT 練習問題も

 大沼さんは、できるだけ座学だけではないようにすることを意識しているという。

大沼 操作に慣れてきた5、6時間目は実際に音楽に詳しい人を授業に招いて作品を作っていきます。2014年はボーカロイドで作曲活動を行っているキャプテンミライ氏(キャプミラP)を招いて作曲を教えてもらったり、2015年はマリンバ奏者でもある音楽科の先生の力を借りて作品を作ったりしました。実践的な部分に重きをおいていますね。作詞は生徒から募集して、授業の中で作詞をします。

ボーカロイド VOCALOID 教育 IT ボカロPも先生になる

評価のためにボカロ作曲した作品を提出

大沼 過去、生徒に出した課題では、自作した賛美歌(キリスト教の礼拝や集会などで歌われる歌のこと)か、好きな賛美歌の伴奏歌声付き音声データを完成させて提出するなどがありました。その課題を提出した後は、生徒同士でお互いの作品を聴き合い、ディスカッションします。

 学校の授業なので課題があると話す大沼さんだが、気になるのは評価のところだ。音楽自体、好みが個人個人違う。一体どのように生徒の評価をするのだろうか?

大沼 伴奏に合わせてボーカロイドが歌えているのであれば、合格ラインです。何層もボーカロイドの歌声を重ねて「ハモリパート」が作れていたり、関西弁などの方言を作品の中で活用したりできていれば、通常より上のA評価やAA評価になります。

 芸術性の部分で判断するというよりも、タスク形式で「できるか、できないか」を基準としているという。ボーカロイドは知っているものの、使うことは初めてという生徒がほとんどのため「みんなスタートラインは一緒」だと話してくれた大沼さんだが、生徒の音楽に対する能力差が評価につながりやすくなっていることを懸念している。

大沼 今後も向き合っていかないといけない課題ですが、生徒個人の音楽能力の差によって評価の差が生まれてしまうのはいけないなと感じています。感性で評価するというより「ここまで達成できたらこの評価」と決めて、生徒にフィードバックしています。

ボーカロイドを使った情報教育の有用性

 講演の最後に話を聞くと「自分で苦労して作った作品が音声データとして手元に残るので『やりがいがある』と思ってくれる生徒が多いです」と大沼さんが話してくれた。

 「デジタル音声処理について実感を持って知り、中には本格的に音楽制作をしたいと考える生徒もいます。かなり新規性のある教育かもしれませんが、生徒の中で将来につながる体験ができているのではないでしょうか。高校生にとって作曲ソフトは難易度が高いかもしれませんが、興味関心の持続率の高さ、作品が完成したときの生徒の達成感を考えるとボーカロイドを使った情報教育は有効ですよ」(大沼さん)

 筆者は大沼さんの話を聞いて、本格化していく小中高校生の情報処理授業やプログラミング教育の中で、最も注目すべきなのは生徒の“興味関心の持続率”ではないかと強く感じた。

 今回取材を行った「第7回教育ITソリューションEXPO」は5月20日金曜日まで開催される。最新のIT教育や事例に興味があるなら足を運んでみるのもいいだろう。

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