初音ミクやアニメ「進撃の巨人」の主題歌を担当したLinked Horizon(Sound Horizon別名義)を知っている人は多いだろう。コミケでニコニコ動画で歌う“歌い手”のCDを買ったことがある人もいるかもしれない。
今回紹介する「M3」はコミケのいわば“音系版”といえる。知名度は東京ビッグサイトで行っているコミケよりも低いが、M3は今月4月24日に第37回を迎える、れっきとした歴史のある“音系・メディアミックス同人即売会”だ。
当日は1000を超えるサークルが一斉に集い、おのおのオリジナルソングのCDを頒布したり、ゲーム音楽のアレンジ作品をブースに並べたりする。イベントは1998年から始まり、毎年春と秋で2回開催されており(年によって2回以上開催したケースもある)、今年で18年目となる。
1回当たりの来場者数は1万人を超え、さらなる躍進を見せていくのではないかと期待されている。
筆者は高校2年生でM3に初参加し、今年でM3参加歴10年になる。友人のサークルで売り子をやったり、DAWソフト(デジタルで音声の録音、編集、ミキシングなど一連の作業が可能なシステム)で作曲したものを配布したりするなどサークル参加も経験した。
しかし、M3参加歴10年であっても「どのようにイベントが設立されたのか」「浅草でやっていた頃はどのような雰囲気だったのか」……詳細をあまり知ることができていないように感じているのが歯がゆかった。
今回は3月に行われた「M3スタッフ説明会」の開催日を狙って、事務局代表である相川宏達氏と副代表の永尾大地氏に、M3の歴史と今後についてをインタビューしてみた。
―― M3は今から18年前の1998年に生まれていますが、当時既にコミックマーケット(通称コミケ)があった時代ですよね。なぜ、M3をやろうということになったのでしょうか?
永尾氏 もともとはコミケに“音楽ジャンル”がなかったことが始まりなんです。コミケでは、アニメソングのカバーは「アニメ」、ゲーム音楽なら「ゲーム」、ドラマCDは「文芸」、MIDIの配布は「ソフトウェア」などに分類されていたのです。
相川氏 当時はCD-Rがようやく普及し始めた頃で、フロッピーやカセットテープ、MDもありましたが、データ販売はない時代でした。音に関わる作品が、それぞれバラバラのジャンルでサークル活動をしていて、点と点だったんです。それを「音系サークルが集まるイベントを1箇所でまとめてやってはどうだろう?」ということで、M3を開催することになりました。
―― M3といえば会場内に「試聴コーナー」といって参加サークルのCDが聴き放題のスペースがありますよね。あれはいつから?
相川氏 会場内の「試聴コーナー」は第7回ぐらいから設置しています。サークルのほとんどがCDをメインで扱っているので、CDプレイヤーも試聴コーナーで貸し出しをしています。また、多くの参加サークルが自分のブースで試聴できるよう、機材を用意していますね。その場で聴いてもらって、作り手とお客さんが交流できるのもイベントの醍醐味(だいごみ)です。
―― 私もCDプレーヤーを持っていなかった高校時代はイベント当日にお借りしました。
永尾氏 今でこそCDをプレスしてくれる業者さんも増えているのですが、M3が始まった頃はCDを作る料金ってとても高かったんです。家庭のPCで焼くことができたり、一般のプリンタでもCDに印刷ができたり、技術が進歩してきたことで作る側のハードルが下がったことも来場者が増えてきた理由の1つですね。
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