「ま、高知でなんかあったらボクに電話してきい」
モイア橋本さん。69歳。
高知の山奥で出会ったDIYアーティストは、とんでもない極楽の作者だった。そして、高知の大自然のように広い心の持ち主だった。
世の中には、作らずにはいられない人たちがいる。役に立つとか評判になるとかを超越して、“自作”せずにはいられない人たちが。そんな人たち自身と、彼らが作ったものを、ライターの金原みわさんが追いかけます。
珍スポトラベラー。全国の珍しい人・物・場所を巡り、レポートを行う。都築響一氏主催メルマガ『ROADSIDER’s weekly』、関西情報誌『MeetsRegional』、ウェブメディア『ジモコロ』にて連載中。著書『さいはて紀行』(シカク出版)発売中。
高知県の高角(たかつの)という場所をご存知だろうか。国道439号線から少しそれたそこは四国の真ん中に位置し、四方は山に囲まれている。自然豊かなそこは、幻想的な「棚田」が有名だ。消えゆく原風景とも言える棚田を求めて、この地域を訪れる人は少なくない。
今日の主役である「モイア橋本」さんは、この高角で暮らしている。
「モイア橋本」という名前だけだと、外国人かと勘違いする人もいるかもしれない。だがまあ、ご覧の通りモイアさんは生粋の日本人であり、仕事を引退した今、ゆうゆうと遊んでいるだけなのだ。
でも、大人が本気で遊ぶ姿っていうのは、いつだって結構面白かったりするものである。
高角集落へ足を踏み入れたその瞬間から、そのモイア節は炸裂する。
極楽の入口は死の先ではなく、高知の山奥にあった。しかしながらこれを初めて見た人は、奇妙な極楽との不意の遭遇に不安を覚えてしまうかもしれない。
さらに坂を登っていくと、何やら石造りの大きなモニュメントが並んでいるのが見えてくる。
これが、モイアさんの傑作「ストーンロード」である。
ストーンロードの先には家屋のようなものが見える。
近づいてみると、騒然と置かれたモノの奥に、人もいるようだ。
一体ここが何なのか気になった人は、勇気を振り絞りその家屋の奥にいる人物に声をかけるかもしれない。
「こんにちは〜、ここって一体……」
ここは本当に極楽なのか? それとも、極楽に引き寄せられる愚か者達の為の、地獄の類ではないだろうか?
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