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高知の山奥で見つけた「異世界」 極楽を作り続けるモイアさん(3/4 ページ)

» 2016年07月08日 06時00分 公開
[金原みわITmedia]

モイアさんのインスピレーション

 「作る前に、格好形がすーっと頭に浮かぶんや。自然を感じる様に、石や木を立てるんやわ」

 「生まれた時からいっぱいどこかしら見てきとろう。建物も像も場所も人も。それがイメージとして浮かぶんじゃわ。1を知るには勉強しな分からんやろう、みんな勉強して習っておぼえるん。ぼくも、いろんなとこへ行ったり、いろんなものを見たけえ、頭に浮かぶんじゃ思う」

なんと地域の公園まで廃材で作ってしまった

 「画家とかはね、年がいってから凄い絵になってくるゆうけどねえ。あんな人がおったこんな人がおった、凄い人がおったと、その出会いが20年30年たって勉強になってね、知恵がついていくんじゃろ」

 「動いてたら目の中に入ってくるけえね。じぃっとしても目の中には入らんよ」

公園にある乳イチョウの木

 「だいたいまあ世の中には、なんちゃせん人がいっぱいおるんけえ。飲んだり食うたりするだけやなくて、なんぞせえってみんなに言うんじゃけんど。草が生えてたら草を引けというんやけど、草の一つも引かん人もおる」

――でも、モイアさんみたいにこんなに精力的に作ってる人は、広い世の中でもそんなにいないと思うのですけど(笑)。

 「そうけぇ」

 モイアさんは照れたように笑った。

おっぱいみたいだから、乳イチョウをピンクに塗ってみたと話すモイアさん

モイアさんが教えてくれたこと

――今まで苦労してきたことってありますか?

 「物凄いこわいこととか、いっぱいしてこうなったよお。怪我をしたり病気をしたり、もう何度もあの世にいきかけたけんど。30歳くらいのとき、伐採中に背骨が折れて、今背中には金属いれとるけえの。あと心筋梗塞で、心臓に三箇所カテーテルいれちょる。夜やったら死んどるけんども、昼やったけ皆おったけえ良かったけど」

――大変だったんですね。

 「まあ、若い頃にはもうもう夢中でやってきててもな、年が行きだしたら、どんどんみんなあ病気がくるひとガンがくるひと、いっぱいその人に襲い出すんじゃけえ。そりゃ襲われん人は幸せじゃけえど。医者やら偉いひとでも、みーんな死んでいくんじゃけえ」

 「それじゃけえ、今生きちょる世の中で、いかに毎日を大切にして、いかに形にしていくか。それが大事じゃけぇ」

高知新聞に載ったというロボット。中には、モイアさんが入っている

 皆もちろん死んでいく、だからこそ生きている今、形を残していく。その行為を、なんでそんな無駄なことを、と思う人もいるかもしれない。

 でもモイアさんの作り出した形は、ちょっといびつでも変でも、美しく輝いていた。

 「君はフリーターか」

――微妙に違います。フリーのライターです。書くほうです。

 「物を書くのか。書くってのは、作るのと同じようなことやけぇ。まぁ、いろんなところへ行って、いろんな人に会って。知恵つけて頑張りぃ」

 なにか胸にじいんと残る感覚が分かった。

――ありがとうございました、モイアさん!

 「まあ、高知でなんかあったらボクに電話してきい」

 私はモイアさんと握手をして別れたのだった。

助けて、モイアさん!

 数十分後、私は電話をかけていた。相手は、先ほど別れたばかりのモイアさんである。

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