麻倉氏:今年のIFAでは”シャープ”の復活劇に驚かされました。自社での出展ではなくヨーロッパでの提携先であるUMCのブースでシャープブランドとして出ていたのですが、「まるでシャープ」と言わんばかりの勢いでブースのあちこちにドデカい“SHARP”の看板がガバガバガバっと出ていました。
麻倉氏:ヨーロッパにおけるシャープの事業は昨年の段階でスロバキアのUMCというメーカーにブランド権と現地の工場を売却していました。IFAは昨年も出展こそしていたもののとてもお粗末なブースで、中国メーカーがたくさんいる区域の片隅にショボい液晶テレビとラジカセが置いてあっただけの「インチキシャープ」状態で「なんだかなぁ……」と思って眺めていました。それが今年は復活を遂げたというか、全てUMCにお任せするのではなくシャープ自身もサポートをしてブースを作っていましたね
――代わりに今年は同じ場所に昨年のシャープと同じ状態の「なんちゃって東芝」の姿が……。日本人としてはなんとも複雑な気分になりました
麻倉氏: シャープは鴻海傘下に入ることで、あちらのCEOであるテリー・ゴウさんの方針で「SHARPをもう一度世界のブランドへ羽ばたかせよう」と頑張っている真っ最中です。数年前までシャープは欧米でも事業展開をしていたのですが、現在のビジネスとしては中国と東南アジアだけで、世界市場に再び挑戦しようとしています。ところが先程も話した通り、ヨーロッパはスロバキア企業のUMCに、そしてアメリカは中国企業のハイセンスにブランド権を売ってしまっています。そのためとりあえずは彼等をパートナーとしてどのようにブランドを再建するかと模索しているのです。
UMCは方針が明確で、シャープから技術を入れて現地生産をすることと、虎の子の先端技術であるIGZOを新分野に投入して再度ブランディングを図るというものです。UMCとしてはシャープの技術力を使ってUMCとしてのビジネスを進めるという構えなのです。今回のIFAではシャープディスプレイカンパニーの桶谷大亥社長もプレスカンファレンスで登壇し「我々が力を入れているIGZOは非常に将来性のある技術」とPRしていました。
麻倉氏:IFAにおける今までのシャープは、場所としては今のLGがいる18番ホールでした。空間としては今年のソニーと同じ広さを持っていたはずなのですが、半分がディーラー向けの商談スペースだったためにあまり広くは感じませんでした。このため以前の記憶を辿ってもそれ程印象的な感じがありません。ところが今回は実にインプレッシブで、シャープというブランドを大々的にアピールするためそこら中にとても大きな「SHARP」ロゴが舞っていました。そこでIGZO技術を使ったフリースタイル液晶や8K液晶、その他の4Kテレビなどが並べられており「シャープ大復活!」の印象を強く受けたという訳です。
加えて今回のディーラーエリアには27インチの8Kモニターがありました。326dpiというiPhoneのRetinaディスプレイと同レベルの画素密度で、平たくいえばiPhoneをズラッと並べて27インチにしたようなものです。8Kの27インチというのは自分がその場にいる様な、あるいはそれ以上の体験と言うか細かさで、ひと目見ただけで「27インチの実世界」というものがそこにあるような感じがするほどの精細感を感じます。IGZOの活躍場面としてこういった極めて高精細な映像再現という所のニーズは確実にあるわけで、技術的シンボルとしてのIGZOだけでなく、それを現実のディスプレイへいかに応用するかというところがシャープとしてやりがいがある部分ですね。UMCとしても他にはない技術をシャープから得られるということで、今回のIFAでは両社がウィン・ウィンの良好な関係にあるような感じがしました。
――UMC側がシャープの技術を高く評価していて、そのためシャープブランドを非常に丁寧に扱っているという感じを受けたのが印象的でした。長い間明るい話題に乏しかった同社ですが、IFAを見る限りは「まだまだ頑張れるぞ!」というメッセージが伝わってきたように思います
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