ガスの火は周りの空気も温めているのに対し、IHは鍋底だけを温めていることが主な原因だった。「つまり、そこには平面加熱と立体加熱の差があることに気がつきました。だから、最終的にはIHでありながら、ガスと近い熱分布を実現するために、コイルの巻き方や配置にまでこだわりました」
しかし、なかなか炊き加減が安定することがなく、どうしても炊きムラがでるなど開発は難航した。また、ごはんが炊けたとしても、もともとバーミキュラの得意分野であったはずのおかずが美味しくできないといった新たな問題も発生したという。このため、バーミキュラ ライスポットは発表から1年間も発売を延期することになる。それが昨年秋の出来事だ。
「個人的には、家電メーカーのように、ひとまず発売した後、どんどん改善していくという商品にあまり魅力を感じません。うちの会社では、一度出したらそれがロングヒットになるような商品を作りたい。そういうモノづくりを大切にしています。だから、すべてにおいて中途半端なものは発売するわけにはいきませんでした」
さすがに困難が続いたときには、「炒め調理まではできなくてもいいんじゃないかな……」などと考えたこともあったという。でも、これまでバーミキュラでできていた料理が、熱源が違うからといってできないというのは、やっぱり納得がいかなかった。こうした想いが粘り強い開発につながる。
「家電ではなく、あくまでも調理道具を作っているので、そういったこだわりは大切にしたかったんです。だから、最終的にはバーミキュラが得意とする低温調理も簡単にできるようにしました。本当にボタンを押して温度を選ぶだけです。一流のプロの方でも、『自宅で使ってみたい』『簡単にできる』と思ってくれたらいいと思っています」
鋳物ホーロー鍋としての存在感と生み出される最高の料理、その両方にこだわり続けた。その結果、バーミキュラ ライスポットは、最高のごはんが炊ける炊飯器であると同時に、最高の“調理道具”としても、さらなる進化を遂げたのだ。
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