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“ルンバブル”なオフィスを作ったガジェット大好き社長の経済学(1/2 ページ)

» 2016年12月07日 14時27分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 ロボット掃除機の黎明(れいめい)期からその可能性に注目し、オフィスの掃除を「ルンバ」などのロボット掃除機に任せてしまった会社がある。しかもガジェット好きの社長は、自身のブログにルンバの使用レポートを掲載して好評だ。そんなユニークな会社が、東京・千代田区にあるビジネスモバイルITベンチャーのe-Janネットワークス。

e-Janネットワークスの坂本史郎社長と同社自慢の清掃員たち

 坂本社長の朝は早い。始発か、2本目の電車で出社し、まずロボット掃除機のスイッチを入れる。すると社員が出社してくる時間までに掃除が終了しているという寸法だ。もちろん掃除のために早く出社するわけではなく、坂本氏は始業までの数時間を使って全社員のDaily Report(日報)に目を通し、すべてにコメントしているという。

 「現在は正社員とアルバイトを合わせ、毎朝80人分の日報を見ています。以前(会社の規模が小さかったころ)は時間に余裕があったので朝にルンバの実験などもやってブログに掲載していたのですが、最近は難しいですね」(坂本氏)

東レでケブラー繊維の技術者をしていた坂本社長が独立したのは16年前。一時は資金繰りに困って“どん底”も経験したが、その頃始めた「朝メール」という習慣に救われたという。日報を介したコミュニケーションもその一環だ
「朝メール」に興味を持った方はITmediaエンタープライズ「オルタナティブブログ」の「坂本史郎の【朝メール】より」をどうぞ

毎月ルンバを買っても元はとれる

 e-Janネットワークスが初めてルンバを導入したのは2008年11月。オフィスのセキュリティを考えたとき、社員が誰もいない時間帯に掃除業者がオフィスに入るのは問題があると感じたという。そこで業者による掃除はセミナールームなどの共用スペースに限定し、55坪ほどの執務室(当時)はルンバに任せることにした。

 「掃除ってつまらないものですから、ロボット掃除機という“遊びの要素”が入るのは良いと思います。ただ、最初はあちこちでルンバがコードにひっかかり、止まっていましたね。皆にコードを床に落とさないように呼びかけ、ルンバが動きやすい環境を作りました」。パーティションはもともと「人が背伸びしたら向こうが見える高さ」に調節したところ、ちょうどルンバが下を通れる高さになった。

現在のオフィス。床にモノは置かず、ケーブルも這っていない

 コスト面のメリットも大きい。「以前いたオフィスでは、バッテリー交換を含めてルンバは年間の総費用が9万円弱です。一方、業者に清掃を頼めば、50坪強程度のオフィスで週1回掃除が月約2万円、カーペットクリーニング年2回が年15万円だといいます。合計40万円弱。毎年ルンバを買い替えても30万円強の費用が節約できる計算になります」

 掃除業者を頼まない代わり、社内に“掃除当番制”を設けた。「10人ほどのチームで1週間ごとに担当が変わります。ロボット掃除機のダストボックスからゴミを回収し、共用場所のゴミを集めることが仕事。実験的な試みではありますが、やはり自分できれいにした場所は汚さなないようになります」

現在は2台の「ルンバ870」と「ルンバ980」が稼働中

 もちろん理想としては、夜中にロボット掃除機を動かし、朝にはオフィスがきれいになっていればいい。一見、スケジュール(予約)機能を使えば簡単に実現できそうだが、実際に以前のオフィスで試したところ、深夜に動き回るルンバをオフィスのセンサーが感知して警備員が駆けつける事態に。休日に警備会社から呼び出しを受けた坂本氏は、以来スケジュール機能を使っていない。

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