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初の有機ELテレビとは思えない超高画質、東芝「X910」を試す山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(1/3 ページ)

» 2017年01月27日 14時18分 公開
[山本浩司ITmedia]

 1月5日から8日にかけて米国ラスベガスで開催された「CES 2017」で大きな話題となったのが、パナソニックとソニーが発表した有機EL大画面4Kテレビ。どちらもLGディスプレイが供給するWRGBカラーフィルター方式の最新パネルを用いたモデルで、パナソニックの65V型は欧州向け、ソニーの55/65/77V型は北米での販売が先行するようだが、両社の関係者はともにわが国での展開を明言しており、今年年央までには国内市場への投入が見込まれる。

東芝初の有機ELテレビとなる65V型の「65X910」

 一方、CESへの参加を見送った東芝映像ソリューションが、 1月11日にいち早く有機EL大画面4Kテレビを発表した(発売は3月上旬予定)。本サイトでも紹介されている通り、55V型と65V型の2モデル展開となる「X910」シリーズだ。昨年末から何度かX910の画質を確認する機会があったので、まだ発売前ではあるが、今月はそのインプレッションを記したいと思う。

 東芝がREGZAブランドで液晶テレビを初めて発売したのが2006年(2005年発売の『Z1000』シリーズを2006年からREGZAと呼んだ)だから、それから11年。ついにそのREGZAブランドに自発光デバイスである有機EL4K大画面テレビが加わることになるわけだ。

 採用されたパネルは、先述のパナソニック、ソニーと同じ3D用フィルムが取り除かれたLGディスプレイ製2Dタイプである。白ピークで800nits(カンデラ/平方メートル)以上の輝度が実現でき(全白時は400nits 程度)、色再現範囲も旧タイプから大幅に改善され、デジタルシネマが定めるDCI P3色域をほぼ100%カバーできる実力を持つという。

 従来の液晶タイプのREGZAは、その画質の良さとUSB外付けHDDと連携させた「全録」の提案によって多くのAVファンの支持を得てきたのはご承知の通り。

 高画質という観点では、2015年後半に発売された旗艦モデル「Z20X」シリーズが印象深い。正面コントラストに優れたVAパネルを採用し、直下型バックライトのエリア駆動によって液晶タイプとは思えないハイコントラストを実現していたわけだが、そのエリア駆動法もバックライトの時間軸と電流値という2つ要素を掛け合わせて制御するというスマートな手法が用いられていた。

 また、4Kアップコンバートや超解像処理を司る同社独自の画質エンジンは、他社を圧倒する魅力を持ち、Z20Xでもその効能の高さを強く印象づけていた。

 とくに通常のSDR(スタンダード・ダイナミックレンジ)コンテンツをHDRライクな映像で表示する「アドバンスドHDR 復元プロ」回路はたいへんすばらしい出来だった。これは収録カメラごとに異なる高輝度領域の圧縮度合いを256階調の輝度ヒストグラムの形状判定と面積分布を元に高精度に圧縮率を類推、原画に近い階調表現と色再現を実現しようというものだ。

クロマ処理においても、最明色(光の反射によって得られる物体色の明るさの限界)を考慮した東芝オリジナルの6144項目の色復元データベースを参照しながら、64色軸の高精度色空間処理回路を用いて低彩度部の補正機能を強化、バランスのよい色合いで、とくにスキントーンの再現に他社製品を凌駕する魅力をアピールしていた。

 今回発表されたX910シリーズの最大のアピール・ポイントは、Z20Xに採用された東芝最新の画像処理エンジン「レグザエンジンHDR PRO」を進化させ、有機ELパネルに合せて再チューニングした「OLED レグザエンジン Beauty PRO」にあると考えていいだろう。

 「熟成型超解像」や「3次元ノイズリダクション」、暗部と明部の階調性を改善する「ローカルコントラスト復元」など、これまで液晶REGZAで培ってきた高画質技術を磨きつつ、新たに加えられた「美肌リアライザー」の効能が興味深い。

「美肌リアライザー」の概要

 これはリアルタイムで刻々と変わる映像の肌色部分をヒストグラム検出し、明部の白飛び(色飽和)を見つけ出し、その部分の階調性を最適化するというもの。結果として肌の自然な質感が描き出せるというわけだ。

濡れたようにグロッシーな黒、そしてハイライトの精妙な階調表現

 実際にX910シリーズの65V型、55V型両方の画質をチェックしてみたが、それはほんとうに素晴らしいものだった。画素1つ1つの振る舞い(明るさや色合い)を個別制御できる有機ELならではの魅力が横溢していて、2008年発売のパイオニア最後の“KURO”、ハイビジョンプラズマモニター「KRP-500M」を今なお使い続けている筆者も、ついに買い替えを真剣に考えるときが来たかとの強い思いにかられたのだった。

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