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秘密は照明のフリッカー! リアル店舗に人を呼び込むフィリップスの「インドア ポジショニングシステム」とは?滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(1/3 ページ)

» 2017年03月25日 06時00分 公開
[滝田勝紀ITmedia]

 照明などから発生するフリッカーは、日本語で“明滅”や“ゆらぎ”と訳され、一般的にはマイナスの要素以外なにものでもない。だが、近年は“ショールーム”などと揶揄される小売り業のリアル店舗にとって、EC店舗との熾烈な顧客獲得競争を有利に運ぶ武器になるといったらどうだろう?

フランスのスーパーマーケットチェーン「Carrefour」(カルフール)でスマートフォンを見ながら買い物をする人

 日本ではあまり知られていないが、オランダに本拠を置くPhilips(フィリップス)は、グローバルでナンバー1のシェアを誇るライティングメーカーだ。創業は1891年、白熱電球作りから始まっており、すでにその歴史は125年に及ぶ。そんなライティングメーカーとしての同社が現在掲げているメッセージは“Lighting, Beyond Illumination”。単なる照明ではない機能的な価値を加えようとしている。

3月上旬に開催された「ライティング・フェア 2017」のフィリップスブース

 その最先端の機能の1つが、VLC(Visible light communication)技術。可視光通信技術を用いた「インドア ポジショニングシステム」(屋内位置情報システム、以下 IPS)だ。日本でも3月7日から10日に東京ビッグサイトで開催された「ライティング・フェア 2017」で発表された、この技術。LEDを目には見えないほどの高速で点滅させ、そのフリッカー現象でデータを送信できる点に目をつけた。可視光通信技術自体は別にオンリーワンな技術ではないが、それを“人の誘導”に使うという発想が新しい。フィリップス ライティング ジャパンの牧野孔治氏に詳しい話を聞いた。

LED照明のフリッカーが武器になる?

 牧野氏は、IPS開発の背景についてリアル店舗特有のメリット、デメリットを挙げて説明した。「世の中、EC店舗全盛です。Amazonや楽天市場などの勢いを見れば、今更データなどを示すまでもありません。ですが、その最大の欠点は購入時に目の前で実物に触れられないことにあります。リアル店舗は購入する物自体が目の前に存在します。手に取って買えることこそが大きなメリットです」

 一方で現在のリアル店舗には大きなデメリットもあるという。「欲しいものが、どこの陳列棚にあるか分からないことがリアル店舗にいると当然ありますよね? もしかすると、その店舗には在庫が存在しないことも考えられます。結果、現在は検索一発で購入できるEC店舗に利便性という観点で軍配が上がっているように思えます。購入履歴やその関連商品などからのレコメンド機能の精度の高さなども追い討ちをかけている要因だと思います」

 では、リアル店舗がもし、検索一発で商品に辿り着けるようなスピード感のあるショッピングを実現し、購入の履歴や関連商品から類推する精度の高いレコメンド機能を手に入れたらどうなるだろうか? それを可能にするのがIPSだ。

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