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KEFが仕掛けた価格破壊、新「Qシリーズ」の実力は?潮晴男の「旬感オーディオ」(1/3 ページ)

» 2017年05月10日 16時09分 公開
[潮晴男ITmedia]

 「Uni-Qドライバー」と呼ぶオリジナリティー豊かな同軸型ユニットの開発によって、KEFのスピーカーは大きな変化を遂げた。最上位モデルの「ミューオン」を筆頭に、現在ではリファレンス・シリーズ、Rシリーズ、Qシリーズ、そしてブレードと呼ぶスリムなスピーカーにもこの方式のユニットが採用されているが、このユニットでしか描き出すことのできないサウンドに多くのオーディオファンがひきつけられている。

 そしてこの度、彼らが“スタンダード・ライン”に位置付けるエントリークラスの「Qシリーズ」が、5年ぶりにリニューアルされることになった。KEFのもの作りは徹底していて、ユニット、エンクロージャーともに、前作をしのぐ完成度に到達するまで新製品をリリースしないことでも知られるが、新世代のQシリーズは前作よりリーズナブルなプライスの設定がなされていることでも話題を集めることだろう。クオリティーを高めつつ値下げを断行する……。ニューQシリーズは彼らの自信が漲(みなぎ)った常識外れのモデルなのである。

5月4日にKEFが全世界に向けて発表した新しいスタンダードモデル「Qシリーズ」
型番 概要 価格(すべて税別)
Q950 フロア型 19万9000円(ペア)
Q750 フロア型 15万9000円(ペア)
Q550 フロア型 11万5000円(ペア)
Q350 ブックシェルフ型 6万8000円(ペア)
Q150 ブックシェルフ型 5万7000円(ペア)
Q650c センタースピーカー 6万6000円
すべてグリルは別売(1500円〜5000円、1枚)

 KEFは1961年に英国で生まれたスピーカーメーカーだ。当初は英国のNHKに当たるBBCに向けたモニタースピーカーを作っていたことでも良く知られている。そしてKEFのスピーカーが飛躍するきっかけを作ったのが、1978年に誕生した「Uni-Q」(ユニキュー)と呼ぶ同軸型のドライバーユニットだった。スピーカーが理想とする点音源を実現するために開発されたUni-Qドライバーは、以来改良が施され名実ともにKEFの顔になったのである。

「Uni-Q」(ユニキュー)はスピーカーが理想とする点音源を実現するために開発された同軸ユニットだ

 ニューQシリーズは、同軸型ユニットを1基採用したブックシェルフ型の「Q150」と「Q350」、同軸型ユニットに加えてウーファーとパッシブラジエーターを組み込んだフロアスタンディングの「Q550」「Q750」「Q950」、そしてマルチチャンネル用のセンタースピーカーとしてリリースされた「Q650」でラインアップが構成されている。モデルによって使用するユニットのサイズは異なるが、いずれも同軸型のUni-Qドライバーの内部構造を改めたところに特徴がある。振動板はアルミ製だが、ツイーターのローデングチューブを円柱形から円錐(えんすい)形に変更することで、高域の減衰特性を改善しローレベル時の再現能力を高めることに成功した。

 ウーファーに関しては、アルミ製振動板の周辺を支えるエッジ部分の幅を広くとり、あわせてスパイダーの形状を変えることでボイスコイルの動作領域を広げているほか歪(ひずみ)も低減した。パッシブラジエーターについても、ウーファーの仕様に合わせて最適動作を可能にする設計が施されている。

 エンクロージャーのサイズは前Qシリーズと同様だが、ここでも新シリーズはユニットの特性が引き出せるよう、さまざまな工夫が加えられた。同軸型ユニット1基のQ150とQ350は、従来オフセットして取り付けられていたものを「LS-50」同様中心部に取り付け、ポートを背面に移すことで中低域の干渉を抑えてクリアなサウンドの再現に努めている。

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