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» 2017年06月05日 18時13分 公開

4K/HDRプロジェクターのリファレンスにJVC「DLA-Z1」を選んだ理由――麻倉シアター大改革(前編)麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/4 ページ)

[天野透,ITmedia]

麻倉氏:そうして最初に入れたプロジェクターがバルコの「Data 800」です。3管式のデータプロジェクターで、ビデオ用ではなくコンピューター映像を映すためのものだったのですが、それでもバルコの映像はシネマライクで、絵の深みや階調感がとても魅力的でした。解像度的には低いですが、画素を映す液晶プロジェクターと違って電子ビームを投影するため、ボケてはいても網がないというのは極めて優位でしたね。Data 800の次は「Graphics 800」を入れ、最終的にやって来たのが3管式の集大成モデル「CineMAX」です。これは投影素子的にいうと9インチで階調もフォーカスも良く、ハイビジョンも映ったため「QUALIA004」の登場まで大活躍しました。ベルギーのバルコに取材に行った時、ちょうどよい機会だから、「なぜバルコの映像は感動的なのですか?」とプロジェクターの責任者に尋ねました。すると、「アサクラさんは、ベルギーには長い絵画の伝統があるのをご存じないのですか?」といわれましたね。

――やはり絵画文化の影響は大きいようですね。南部フランドルのベルギーはレンブラントなどのオランダ系をベースに、パリを中心とした印象派の影響が混ざり合うといったところでしょうか。シュルレアリスムの大家、ルネ・マグリットなどが有名です。それにしてもCineMAXは当時の麻倉先生の代名詞でしたね

麻倉氏:3管式というのはブラウン管ですから、パワーを入れるとビームが太くなってしまいます。今、見直すと甘さは否めないですが、それでもバルコの持っている階調性、コントラスト性と同時に、えもいわれぬ気品がありました。ちなみにこのCineMAX、入力はY,Cb,Crの色差信号とRGBの2系統がありますが、絵はRGBが断然良いんです。というのも、色差信号はRGBをマトリックス処理していて、画質のためには当然そんなことをしない方がいいわけです。ですがRGB信号は基本的に業務用のインタフェースで、普通のビジュアル機材にはそうそう付いていません。どうしたかというと、ソニーのマスターモニター「BVM-2013」の変換機能を使ってCineMAXに入れていました。すごく画質が良かったです。

――マスターモニターを変換器にするとは、なんと酔狂な(笑)

3管式プロジェクターの傑作「CineMAX」、麻倉怜士の代名詞。電源を投入することはなくなっても、手放すことはできないという
CineMAXに搭載されている業務用のRGB入力端子を使うために麻倉氏が取った手段は、ソニーのマスモニ「BVM-2012」を変換器に使うというもの。実に酔狂で正しくAVラバーな手段

麻倉氏:次にわが家へ来たのはソニーの「QUALIA 004」でした。発表は2003年で、シアターに入ったのは2004年のことです。これでついに3管式を卒業したわけですが、これも相当に良かったです。今見るとコントラストが淡い感じもしますが、当時は液晶デバイス初のフルHDプロジェクターということで、たいへん話題になりました。

 当時のプロジェクターは720pが精一杯で、しかもソニーの前モデルはやたらと緑が強かったんです。これは人間の視覚が緑に対して感度が高いためで、緑を強調すると体感的に明るくなってフォーカスも上がるので、暗い液晶プロジェクターは緑を強調していました。ですがこれでは当然絵が緑っぽくなって赤が出ないという問題を抱えます。ところがRGBのハイパワーピュアキセノンランプを使ったQUALIAはきちっとした絵で、これによってソニーの絵が特徴付けられたといえるでしょう。QUALIAが本来果たすべき役割をちゃんと果たしていたわけです。

麻倉氏が「どうしても手放せない」という歴代のリファレンスプロジェクター。まるでプロジェクターの歴史博物館状態

 以前はソニーとバルコがハイエンドプロジェクターにおける2大巨塔で、バルコ派だった私がソニーを使ってみたところとても良かったのです。どこが良いかというと階調ですね。強調感がなくフラットな感じで、暗部階調が液晶にしては凄く出ていました。色も不自然な着色系だったりクセっぽかったりせず、バランスが整って質感も高かったですね。フルHD時代はこれで画質の世界を開拓し続けました。

――QUALIA 004は僕も印象深いモデルです。当時はまだ地元に居て、QUALIA大阪へ観に行った事があったんですけれど、鮮烈なコントラストと自然な色調に「特大サイズのテレビがある!」と驚いたものです。あれでプロジェクターに対する僕のイメージは完全に変わりました

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