仕事に集中したいときやジムで汗を流すとき、あるいは自宅でくつろぎたいとき、音楽やBGMをかける人は多い。音楽を聴くと集中力が高まったり、リラックスできたりするような気がする。実際、音楽が心や体に与える影響に関する研究は多くある。
この音楽の効果を医学的に活用し、続々とサービス化しているのが、アメリカ・ボストンで2014年に創業した「Sync Project」だ。マサチューセッツ工科大学の研究所・MITメディアラボ所長の伊藤穰一氏も取締役として参画する、有望スタートアップでもある。
同社が提供するのは、ビジネス向けチャットツール「Slack」と音楽ストリーミングサービス「Spotify」とを組み合わせ、目的に沿った音楽を自動的に選んで配信してくれる「Sync Music Bot」。
筆者はちょうど、自分のプレイリストは毎日聞いて飽きてきたところでこのサービスを知った。そこで、どんな音楽が配信され、実際により集中力を高めたり、リラックスさせてくれたりするのか、試してみた。
Sync Projectが提供する音楽配信サービス「Sync Music Bot」はその名の通り、Slackで「Bot」にメッセージを送ると、曲を選定し、毎日新しいプレイリストを配信してくれるというもの。
サービスの利用に必要なのは、SlackとSpotify(有料、無料どちらでも可)のアカウント。まずはSlackにSync Music Botをインストールする必要がある。
手順は簡単。ウェブサイトの「Add to Slack(Slackに追加)」ボタンをクリックし、Slackのチームを選ぶだけ。あとはSlack上でSync Music Botが利用方法について話しかけてきてくれるのを待てばいい。Spotifyはアプリをダウンロードし、起動させておく。
すると、Botがダイレクトメッセージで、「仕事により集中できる音楽を配信するために、チームに参加したよ! 数日間使って、違いを感じるかどうか試してみて」と話しかけてくる。
Sync Music Botに音楽を配信してもらうには、リクエストをメッセージで送信する必要がある。仕事により集中できる音楽が聴きたい場合、「Work to electronic」や「Work to ambient」など、「Work to」の後ろに音楽のジャンルを入力する。
送信すると、リクエストに合った約10曲を自動的に選んで、プレイリスト(Sync Music Botはこれを「Set」と呼ぶ)にして返信してくれる。「Work to ambient」でリクエストしてみたところ、送られてきた曲はどれも知らないものばかり。
Sync Music Botとのやりとりは英語。しかし、難しい表現はなく定型文が多いので、慣れれば問題ないだろう。
プレイリストの曲を実際に聴いてみると、イギリスの音楽家、クリント・マンセルやフランスのバンド、エールの曲など穏やかな曲が多く選ばれており、実際に気分が落ち着き、目の前の仕事に集中するできるように感じられた。
Sync Music Botを利用するメリットの1つは、毎日新しいプレイリストが配信され、ほとんどが自分の知らないアーティストであることだ。自分のプレイリストはどうしても自分が知っているアーティストや自分の好みの曲ばかりに偏ってしまい、それも何度も聴いていればマンネリに感じられてしまう。Sync Music Botから送られてくる曲の中には好みでない曲も含まれるが、それもまた新たな発見だ。
一度リクエストを送ると、毎日プレイリストが送られてくるが、プレイリストのすぐ下にある「Daily Setting」で、配信時間を変えたり、停止したり、追加したりできる。例えば、朝9時には仕事に集中できるプレイリスト、夜10時には就寝に向けてリラックスできるプレイリストといった具合に、好みのカスタマイズが可能だ。
さらに、Sync Music Botが選んだプレイリストを評価したり、シェアしたりすることも可能だ。評価することでSync Music Botは学習し、次のプレイリストの作成に生かしているという。プレイリストをSlackのチームメンバーにシェアすると、シェアされたメンバーもその評価ができ、さらなるSync Music Botの学習につながる。
同社は、ウェブサイト上に「A Million Songs」というアンケートページを設けている。寝る前やリラックスしているとき、仕事中、エクササイズ中など、6つのシチュエーションで自分に合った曲を回答できる。同社はこのアンケートで得た情報を、神経科学者や音楽家の助言を得て分析し、より効果的な曲の提供に生かすつもりだ。
執筆:中井千尋
編集:岡徳之(Livit)
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