ポケモンGOの協力プレイは、言葉の壁すら崩壊させる。ドイツ・ベルリンでそんな体験をしてきた。
9月になって、「Pokemon GO」(ポケモンGO)では協力プレイのレイドバトルに、伝説ポケモンの「エンテイ」「スイクン」「ライコウ」が登場するようになった。
1カ月ごとに地域によって3体が入れ替わる仕様になっていて、日本ではまずスイクンが出現している。
一方、筆者はIFA 2017の取材のため、9月3日までドイツに出張していた。ドイツではエンテイが出現しており、これを捕まえて帰国すれば1カ月間は他の編集部員に自慢することができる。そう考えた筆者は、取材の合間にエンテイゲットにチャレンジすることにした。
日本でレイドバトルに挑む時、気にするべきことは何か。そのジムの周辺にポケモンGOをやっているとおぼしき人たちが集まっているかどうかだ。人々が下を向いてスマホを連打しているため、ポケモンGOをやっていない人でもそういった場所では何となく異様な雰囲気を感じられる。
エンテイの姿が駅前のジムにあるのをアプリで確認し、るんるんで駅前に向かう筆者は歩きながらある疑問が浮かんだ。
「ドイツでポケモンGOって流行っているのか……?」
筆者は前日に、IFAの会場(メッセベルリン)にあったポケモンGOのジムでバトルし、入っていたポケモンを倒して自分のポケモンを配置していた。とはいえ、IFAの来場者数は24万人(2016年の実績)にも及ぶ。それだけ人が行き来すればジムが落とされるのも一瞬だろうと思っていた。
置いたポケモンは翌日、ジム維持ボーナスの「ポケコイン」をきっちり50個(1日に取得できる上限数)持って帰ってきた。
嫌な予感がする。もしかすると、ドイツではポケモンGOがあまり流行っておらず、伝説ポケモンを打倒できるほどレイドバトルに人が集まらないのではないか。
エンテイが出現しているジムに着いた。下を向いてスマホを連打している人は……いない。
迷う。ここで戦うのは無謀だからレイドパス(レイドバトルに参加するためのアイテム)を消費するだけ無駄だ。イヤどこに行っても同じなら、せめてバトル中のスクショだけでも。
出張中にポケモンGOに割ける時間も多くない。迷った末に、バトル中の写真だけでも撮ろうと思い、レイドバトルに参加することにした。
レイドバトルに参加すると、バトル開始まで最大120秒の待ち時間がある。他のプレイヤーの参加を待つためだ。筆者が参加すると待ち時間は120秒、つまり参加者1人の状態だった。
仕方ない、と気を落としながらもバトル開始まで待っていると、近くにバス停があったようで、停車したバスから7人ほど人が降りてきた。
彼らの進行方向がちょうど自分が立っているあたりを通過するようで、邪魔になっては悪いと移動しようとすると、その中の1人に何か声を掛けられた。
突然で何を言ったか分からなかったので、取り合う必要があるのか分からず、その場からフェードアウトしようとするともう一度声を掛けられた。今度は聞き取れた。
「君もエンテイ戦でしょ?」
よく見ると、彼ら彼女らはグループで行動しているようだ。見た目の年齢はばらばらで、20〜40代くらいだろうか。みんなスマホを手に持ち、これからレイドバトルに挑もうとしている。
「どこから来たの?」
「日本だよ」
「何しに? あ、IFA?」
「そうそう」
そんな会話をしながら彼らとバトル開始を待つ。
せっかくなら、とレイドバトルで戦わせるポケモンの先頭を、ポケモンGOスタジアムでゲットしたミュウツーにしてみた。
「ミュウツーじゃん、なんで持ってるの!?」「写真撮らせて!」
日本のイベントで先行してゲットしたことなどを伝えて、場が暖まったところでバトルが始まった。
バトルには勝つも、ゲットチャレンジはみんな失敗。近くのジムにもう1体エンテイがいたので、そっちに一緒に行こうという話に。
中には時間がないからじゃあね、と去っていく人もいれば、次のバトルから合流してきた人もいた。全員が顔見知りなのかどうかまでは聞けなかったが、友人どうしでかたまって行動しているというよりは、ちょうど同じバトルに行くから行動をともにしていた、程度の緩いつながりで動いていたようだ。
筆者はドイツ語は全く話せず、英語も流ちょうに話せるわけでもなかったので自分から話しかけるということはできなかったが、彼らが英語で積極的に話しかけてくれたので頑張って答えた。
「日本のプレイヤーってみんなトレーナーレベル40なの?」
「そんなことないよ」
「どういう人たちがやってるの?」
「周りを見ていると、自分より年上の人が多いかなあ」
そんな会話をしているうちにバトルも終わり、ゲットチャレンジに。ここからは真剣に狙いを定めないとエンテイを捕まえられない。みんな無言でスマホに向き合う。
「やった! 捕まえられたよ!」
そう声を上げたのは筆者だった。初めてのエンテイかい、良かったね! と彼らも一緒に喜んでくれた。
ゲットチャレンジも終わり、近くにエンテイが出ているジムもないので彼らは別の場所へ移動するという。さすがにIFAの取材もあるので、ここで彼らと別れることに。
その前に、記念に一緒に写真を撮りたいと筆者が言うと、みんな快く応じてくれた。
「短い時間だったけど、一緒にバトルできてとても楽しかったよ」真ん中のヒゲが立派な男性が最後、筆者に話しかける。
「本当に楽しかった。ありがとう」と、握手をして解散した。
筆者はベルリンで貴重なものを得た。1つは日本のプレイヤーに自慢できるエンテイ。もう1つはポケモンGOをきっかけに、海外の人とも交流できるということ。
スリの可能性もあったのでは、という疑問もあるかもしれない。この件に限らず、出張中はほとんど1人で行動していたので最大限そういったことには気を付けていた。誰がスリかと疑えば際限がないのだが、レイドバトルに真剣に打ち込む彼らのことは信用して良かったと思う。
海外で知らない人について行ってはいけないのは間違いない。しかし、人目に付く場所など常識的な範囲であれば、ポケモンGOをプレイしていることで思わぬ“出会い”があるかもしれない。
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