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今、何ができる? 「東京モーターショー2017」で見たコネクテッドカーの最先端(3/4 ページ)

» 2017年10月27日 13時57分 公開
[山本敦ITmedia]

コネクテッドカーのためのオープンプラットフォーム「SDL」

 国内・海外の自動車メーカーがオーナーに提供するコネクテッドカー向けのサービスをざっと見回した限りでは、それぞれ自社のクルマとサービスの中で完結しているクローズドなものが中心となっている様子だった。かつてトヨタがG-BOOKをマツダやダイハツに対して提供していたこともあったが、基本的に今は各社の商品にさらなる価値を付加するためのオプションとして位置付けられているようだ。

 一方では、今年の1月に米フォード・モーター・カンパニーとトヨタが中心となり、マツダ、スズキ、スバルなどの自動車メーカーも参画するコネクテッドカーのためのオープンソースプロジェクト「スマートデバイスリンク(SDL)」が立ち上がった。こちらはオープンソースのプラットフォームを土台に、参加する各社が共通の使い勝手を実現した製品とサービスを開発、提供しようとする新たな展開だ。

「スマートデバイスリンク コンソーシアム」に加盟するメンバー企業

 「TOKYO CONNECTED LAB 2017」には非営利団体「スマートデバイスリンク コンソーシアム」に加盟するトヨタが、SDLに参加するパートナーを招いてブースを出展していた。トヨタが掲げる「コネクテッド戦略」は、自動車そのものの「コネクテッド化」を起点に、車の走行情報などビッグデータの有効活用による利便性の提供、そして異業種やIT企業と共に作る新しいモビリティサービスを立ち上げ、成長させるという3つの段階的な成長を目標に掲げている。トヨタではSDLのプラットフォームをベースにする車載システムを2018年頃の商品化を目指して開発中だ。なお米フォードでは既に、2013年にSDLの大元となるスマホアプリと車載機器を連携させる「アップリンク」(AppLink)のシステムに対応する製品やサービスを、世界中500万台を超える車両で提供を始めている。

 SDL対応のナビゲーションシステムや、アプリサービスなどは2018年以降に数が出そろってきそうだ。東京モーターショーではクラリオンがSDL対応のナビゲーションシステムの試作機を出展していた。

クラリオンがSDL対応のナビゲーションを展示した
ヤフーカーナビやナビタイムなど、アプリもSDL対応のサービスが増えていくことになりそうだ

LINEやトヨタが自動車向けAIを開発

 またSDLコンソーシアムに加盟するLINEもスマートスピーカー「WAVE」に搭載する独自のAIアシスタント「Clova」(クローバー)を車載向けに展開する準備を進めている。イベント会場ではスマホから送られてきたLINEのメッセージを音声で読み上げたり、LINE MUSICの音楽を声で検索・再生、さらにニュースや天気情報などの検索もClovaに声でリクエストしながら操作できる車載システムを体験できた。

LINEが展示したClova搭載のコネクテッドカー
ハンドルにClovaを起動するためのボタンが搭載されている

 スマートスピーカーと使い心地の点で少し変わっている所は、はじめに「クローバー」と声をかけるのではなく、ハンドルに設けられたClovaの起動ボタンを押してAIを立ち上げるという点だった。ボタンを押すとスタンバイ状態に切り替わり、声で「松田聖子の音楽をかけて」「名古屋の天気を教えて」といった感じにリクエストする。エンジンをかけていないデモカーだったので、実際に走行中にはロードノイズに囲まれることを想定すると、マイクが正しく認識できるのかなど気になるところもあるが、今回体験したデモ環境の限りではWAVEスピーカーと同等レベルの反応を実現できていた。LINEも2018年中にはコネクテッドカー向けサービスの提供を始める予定だ。

LINEのメッセージを音声で読み上げるサービスも
LINE MUSICのアーカイブから音声で楽曲を検索
指定したエリアの天気情報なども検索できる

 トヨタも独自に日本語対応のAIアシスタント「YUI」(唯)を開発している。トヨタのメインブースでは「Concept 愛-i」というネーミングで、車載カメラと顔認識技術を組み合わせた感情検知のシステムを搭載するAIのシュミレーターを展示。来場者にコンセプトを紹介している。

トヨタが展示した「Concept 愛i」のデモカー

 AIにあらかじめユーザーの顔を登録。「映画がすき」などのプロフィールを設定しておくことで、その情報を元にYUIがドライブのルート検索に「あの映画で出てきた有名なロケーション」など行き先の候補をセレクトしてくれる。道中はAIと対話しながらマニュアル/自動運転モードの切り替えをコントロールしたり、エアコンの自動操作、走行中の危険回避などをAIがアシストしてくれる未来のドライブ体験も味わえた。

独自に開発するAIアシスタント「YUI」を搭載する
YUIのコンセプトを体験できるブースのデモンストレーション
オーナーの好みにマッチしたドライブの行き先を提案してくれる
ドライブ中にオーナーの表情の変化を読み取り記録を残す

 走行終了後にはドライブにかかった時間と距離のほかに、車載カメラでユーザーの表情を認識して「嬉しそうな顔をしていた場所」「驚いた表情を見せた場所」などドライブの思い出を記録してくる。トヨタではYUIの商用時期は未定としているが、パートナーとして一緒に成長していくクルマのAIと、人間の新しいコネクテッドな関係のこれからが期待できるデモンストレーションだった。

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