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2017年の有機ELテレビを総括、そして初の8K対応液晶テレビの実力は?(1/3 ページ)

» 2017年11月14日 12時57分 公開
[山本浩司ITmedia]

 今回の連載は、今年発売された高級大画面テレビを俯瞰(ふかん)し、読者のみなさんにぜひ注目していただきたい製品を記してみたい。

 今年は夏までに4社から有機ELテレビが出そろい、秋以降はバング&オルフセン(デンマーク)の「Beovision Eclipse」(ベオビジョン イクリプス)以外、新製品が登場することはなかった。65V型と55V型をラインアップするBeovision Eclipse は、LGエレクトロニクスの製品をベースにしたもので、画質と操作性はそのままの印象があるが、デザインと音質の両面で独自の魅力を放っている。

バング&オルフセンの「Beovision Eclipse」

 ブラックとシルバーのツートンでまとめられた本機の意匠は、なるほどB&O製品だと思わせるゴージャスさ。電源を入れると、円形の台座に載せられたスタンドがゆっくりと回転して前方に迫り出してくる演出もしゃれている。ディスプレイ下部に大きな帯状のスピーカーが配置されているが、ここにはL/Rスピーカーとセンタースピーカーがビルトインされている。本格的な帯域バランスを訴求するそのサウンドはテレビの常識を超えるもので、間違いなくB&Oクオリティ。

 「今回はちょっと音をがんばってみました」という国産テレビとは次元が異なる印象だ(もっともこのテレビ、65型で220万円以上するのだが……)。また、本機内にはサラウンドデコーダーが内蔵されており、スピーカーの追加で簡単に7.1 ch化が果たせるようになっている。

 さて、今年前半に登場した4社の有機ELテレビについていうと、セールス面ではソニーの「A1シリーズ」がぶっちぎりの強さを示しているようだ。確かにこのテレビのHDR画質の良さ、アクチュエーターを用いてパネルを振動させて画面から音を発する「アコースティックサーフェス」の面白さは群を抜いていると思う。

ソニーの有機ELテレビ「A1シリーズ」。55V型、65V型に77V型も追加された

 しかし、地デジのオンエア画質を含めた画質総合力でNo.1なのは東芝「X910」だろう。会社のパブリックイメージが地に落ちて、残念ながら売れ行きは低迷しているようだが、「おまかせ」画質モードの完成度の高さ、様々な調整が可能な「映画プロ」モードの趣味性の高さを含め、有機ELテレビに興味をお持ちの多くの方に、ぜひ注目していただきたい製品だ。

 それから、発売以降各社ともにファームウェアのアップデートで画質・操作性を向上させているが、中でもその画質向上ぶりに瞠目させられたのが、LGエレクトロニクス製品だ。暗部のノイズやバンディング・ノイズ(階調段差)が他社製品に比べて目立つ傾向にあったのだが、最新のファームウェアに変更されてから、それらが気にならなくなったのである。

 同社製有機ELテレビは、「W7P」「E7P」「C7P」と3ラインアップが用意されているが、それは意匠や音声面の違いで映像処理回路そのものに違いはなく、画質は同等。そう考えると、最もシンプルなC7Pのコストパフォーマンスの高さは圧倒的だ。とくに55型の値段を知ると、こと大画面テレビに関して言えばもう液晶テレビは要らないのではないか? とすら思う。

LGエレクトロニクスの「C7P」シリーズ。55V型なら23万円前後のプライスタグを付けている店もある

 実際に一般的な100〜200lx(ルクス)程度のリビングルーム照度環境下で有機ELと液晶を見比べると、安定した黒をベースにしたコントラスト表現の秀逸さ、細かな動きがボケない動画応答性の高さ、視野角の広さで自発光の有機ELに大きなアドバンテージがあるのは、誰の目にも明らかだろう。大画面液晶テレビはますます買いやすさが求められていくのではないか、というのが筆者の正直な感想だ。

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