テレビ番組の人気ドラマやバラエティ番組などを中心に見逃した放送をスマートフォンやPCからインターネット経由で視聴できる“見逃し配信サービス”「TVer」(ティーバー)が、3月31日までの期間限定でソニーの“ブラビア”シリーズでも楽しめるようになった。わが家のテレビも対象のAndroid TVを搭載したブラビアだったので、“テレビ版TVer”の使い心地を試してみた。
TVerとは、国内の民間放送局が参加するインターネットを使ったテレビ番組の見逃し配信サービスだ。iPhoneやiPad、Android OSのスマートフォンやタブレットは専用アプリで、PCはWebブラウザを使って視聴できる。番組の始まりと途中にスキップできない動画広告が挿入されるが、アプリのダウンロードと動画の視聴は無料だ。
TVerに公開されているドラマやバラエティ、アニメなどの番組は、テレビ放送から1週程度、見逃し視聴ができる。スマホやタブレットの場合は端末にコンテンツをキャッシュして見ることができないため、屋外で利用する場合はモバイルネットワークやWi-Fiを利用することになる。
TVerは2015年10月に始まったサービス。当時からインターネットにつないでコンテンツを楽しめるテレビは存在していたものの、TVerのサービスに参加する5局(日本テレビ放送網、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビジョン)の間で、「テレビでもTVerが手軽に楽しめること」の是非についてコンセンサスがまとまらない部分があったようで、今日まで実現できていなかった。ようやく実証実験という形で実現したテレビ向けアプリサービスは1月15日から3月31日までという非常に短い実施期間だが、ブラビアシリーズ、あるいはTVerのユーザーにとっては等しく興味深いイベントといえるだろう。ソニーが発表しているブラビアの対象モデルはこちら(対象モデル一覧)を参照してほしい。
筆者宅のテレビはこのリストにある2016年発売の「KJ-43X8300D」。普段はBlu-ray DIscレコーダーでおまかせ自動録画した番組などを自宅のテレビやスマホによるリモート視聴も活用しながら定期的に視聴している。自宅のモデルがいわゆる“全録”対応機ではないので、ドラマをチェックするときなどにTVerも併用している。もしテレビでもTVerが使えたら、レコーダーが拾いきれなかった面白い番組との出会いが広がるし、家族と一緒に見ることもできてありがたい。
アプリのインストールはいつもの要領。Android TVのホーム画面から探してインストールする。現在はホーム画面のトップでTVerを絶賛宣伝中なのですぐ見つかった。
インストールしてから画面を開いてみると、モバイルアプリやPCのブラウザ版TVerと比べてデザインが簡素で素っ気ない感じがするものの、試験期間なので仕方ないのかもしれない。左側のメニューに「新着」「(人気)ランキング」やドラマ、バラエティ、アニメなどの「ジャンル一覧」が表示される。
アプリからできること、機能についてもモバイル&PC版に比べるとだいぶ貧弱だ。番組表や検索、お気に入りコンテンツのマイリスト登録やシェア、リジューム再生などの便利な機能がほとんど省かれている。フジテレビの見逃し番組など、モバイル&PC版にはあって、テレビ版で見られないコンテンツも散見される。
テレビ版TVerでコンテンツを再生してみると、モバイル&PC版と同じようにコンテンツの再生開始と、合間のタイミングでPR動画広告が再生される。筆者がチェックしたコンテンツでは、およそ10〜15秒のCMが2〜3本ほど入る感覚だった。早送りを使った頭出しはできないこともないが、チャプターやサムネイルを頼りに見たいシーンに見当を付けることができないし、モバイル&PC版と同じように早送りするとPR動画が再生されるので、実用性はイマイチだ。
本編の映像は4Kテレビで見ることを想定して作られていないためか、解像度は低め。画質設定も設けられていない。見逃し番組のチェックを第1目的として割り切って視聴するぶんには十分だが、もし試験実施から本採用となった段階ではぜひ画質をブラッシュアップしてもらわないと、大画面テレビで好きな女優やキャラクターが出演している映像を見る喜びも色あせてしまうので困る。
今回のテレビ版TVerの良かった所は、アプリを利用する際にユーザー登録などがいらないので、一人のユーザーがテレビとモバイル端末を使って、同じ番組を同時に再生することもできたことだ。コンテンツがクラウドにあって、誰でも無料で楽しめるサービスならではのメリットといえる。これがわが家の録画機だったら、リモート視聴でコンテンツを楽しもうとしている時に自宅で家族が録画機を立ち上げてしまうと配信がストップして見られなくなってしまう。
テレビ版TVerはユーザーインタフェースの作り込みや機能面など、モバイル版やPC版に比べると明らかに“プロトタイプ感”が漂っている。現時点でまともに評価してしまうと「使いづらい」「やっぱり要らない」と感じてしまうかもしれないが、現時点ではむしろサービスの本質的な価値にフォーカスするべきだと思う。今回のTVerのチャレンジは、これからのスマートテレビに画期的な進化をもたらす可能性を秘めていることが浮き彫りになってくるからだ。
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