世界初公開! ダイソンの空調製品研究施設を見てきた:技術革新の現場に潜入(3/3 ページ)
ダイソンの空調家電に関する研究開発を行っている、シンガポールのDyson Operations Pte.Ltd,(DOPL)研究施設を訪ねた。この施設の奥にまで報道関係者が立ち入るのは初だ。
扇風機の基本、「Primary Flow Test」
分厚い金属製の箱に「Dyson Pure Cool Link」が半分埋まっているシュールな光景。これは、スタンド部にある吸気口の周囲を密閉状態にして、限られた空気取り込み口から「いかに空気を取り込めるか」を測定するエアフロー検証装置だ。D'Souza氏によると、「すべての空調製品において、最初に調べるのがエアフロー」というほど重要な試験項目だという。
そして正確な検証結果を出すには、テスト機器のコンディションも最適な状態を維持する必要がある。装置につながる空気取り込み口は、ISO規格に適合した校正装置で厳密にキャリブレーションを行ったものを、わざわざ英国から送ってくるという。
風を快適にする検査も
ここまでは空調製品の基本スペックに関わる検査だが、この研究所で調べるのはそれだけではない。その空調製品を使用した人がどのように感じるかも大事な検証項目だ。ここではグループモニター試験など実際に人間が体験する手法に加え、大量のセンサーを用いて風の強さを可視化していた。
扇風機の前方には21個のセンサーが下がっている。操作卓をいじるとセンサーを取り付けたフレームが上下/前後に動き、どれだけの風が届いているか(=フローレート:風の速さ)を数値化する。最高速度はもちろん、ムラなく風を送り出せるかなど、多くの情報が取得できるという。
「Relative Humidity Chamber」
「Relative Humidity Chamber」は、加湿器などの性能を検証する湿度計測のための実験ルーム。計測時は室内の温度や湿度、気圧にいたるまで、毎回同じ条件にする必要があるため、壁をすべて金属にした上、外側に冷気を巡らせて部屋全体の温度を下げている。いわば部屋全体が巨大な冷蔵庫に入っているようなものだ。
また、写真撮影はできなかったが、「Dyson Hot&Cool」シリーズのヒーター機能などをテストする「Environmental Control Performance Test Chamber」も見ることができた。IEC(国際電気標準会議)基準に沿って暖房機の性能を検証するため、部屋を断熱材で覆った上に、やはり外側に冷気を巡らせて室温を常に9度に保つ。なお、IECの基準では室内に1つのセンサーを設ければいいことになっているが、この部屋には24個ものセンサーが取り付け、部屋の隅々まで検証できるようにしていた。
いずれも国際規格に照準を合わせつつ、それを上回るレベルで検証が行えるようになっていた各実験ルーム。DOPL内の各研究チームに引っ張りだこで、ほぼ常時、稼働している状態だという。「テストには1時間程度から丸1日以上かかるものまであります。その上、各チームが部屋を使いたがるため、スケジュール調整が大変なんです」(D'Souza氏)
見学の最後に、現場のエンジニアの立場でダイソンの研究開発と成長を続けている理由を分析してもらった。「ダイソンの製品は、開発したものをテストしてパフォーマンスを検証し、次の段階に行くという手順を繰り返して作られます。すごく時間をかけますし、たいへんな努力が必要ですが、常により良い製品を作ることを考えています。その構図の上でダイソンは成長しているのではないでしょうか」(Blanc氏)。
ダイソンの技術開発は、過剰なほどの設備を整えた研究開発拠点と、そこで働く熱意ある若いエンジニアたちが支えていた。
(取材協力:ダイソン)。
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